おまえさん

おまえさん(上) (講談社文庫)何度も言っているかもしれないが、宮部みゆきの時代小説はいい。
登場人物の造形と雰囲気作りが見事である。
「ぼんくら」から続くシリーズ3作目の本書も期待を外さなかった。
事件としてはたいしたことは無いのだが、上下巻で1,000ページを越える素晴らしいエンターテーメント・人情話になっている。

主人公は本所深川の冴えない「ぼんくら」同心・平四郎である。
本人はそれほど仕事熱心でもないのだが、彼の周りには不思議と優秀な人が集まってくる。
美男子で頭脳明晰な甥・弓之助、頼れる下町のおかみさんお徳、岡っ引きの政五郎、その手下で完璧な記憶力を持つ三太郎。

橋の袂で死体が発見され、死体が回収された後もなかなかヒト型の跡が消えないことろから事件は始まる。
それが薬屋の主人の殺人事件に繋がり・・・

ミステリーとしては、それほど凝ったトリックがあるわけでもない。
このシリーズの楽しみは、やはり人物造形である。
今回も、新しいキャラクターが登場し、楽しませてくれる。

まずは、将来を嘱望される同心の信之輔。
真面目で、頭が良く、腕も立ち。
ただ、顔が悪い。
平四郎をして、「惜しい」と言わしめる顔の悪さらしい。
その信之輔が、挫折を味わい一人前の同士に育っていく成長の物語でもある。

次に、その叔父のご隠居・源右衛門。
親戚中をたらい回しにされて、信之輔の家に辿りつた、居場所のない老人である。
趣味が死体の検分という変人である。
この老人もいい味を出している。
そして、時に泣かせる。

最後は、弓之助の兄・淳三郎。
平四郎に「こんな玉を隠してやがったか」と言われる人物である。
美男で滅法頭のよい弓之助は天下無敵だと思っていたが、この兄は弓之助の向こうを張れる人間だった。
弓之助のような神々しさはないが、人懐っこいいい男ですぐに人の懐に入り込む、町人ながら刀も扱える、そして調子の良い遊び人だが商売の才覚もあり、決していい加減ではない。

これらの新しい登場人物も加わり、ますます面白いシリーズになって来た。
もっと刊行ペースを上げてもらいたいものだ。

[amazonjs asin=”4062770725″ locale=”JP” title=”おまえさん(上) (講談社文庫)”]

[amazonjs asin=”4062770733″ locale=”JP” title=”おまえさん(下) (講談社文庫)”]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です