フレーミング

フレーミング「自分の経済学」で幸福を切りとる自閉症の持つ特殊な能力と差別について多く語られている。
その分野には興味がないのだが、それ以外の部分で面白い考え方が多く提示されている。
テーマ以外が面白いという不思議な本だった。

「フレーミング」とは、各自が自分の価値観で現実を切り取る文化的傾向であり、経済活動である。

大恐慌時代、人々は出費の大きい外出を避け、ラジオやボードゲーム、家族内での楽しみを見出し、それが米国の文化を形作った。
現在の不況により、同じような文化の転換が起こっている。
人々は、運動を増やし、外食を減らして料理をし、自己学習の活動が増え、図書館やインターネットの利用も増えている。
面白い視点だ。
このような時にこそ、「自分だけの経済を創造する」と著者は主張している。

アクセスが簡単であれば、われわれは短く、心地良く、小さいものを好み、アクセスが困難であれば、大規模な制作物や派手なもの、傑作などを求める傾向がある。
現代に生きる我々は、ツィッターのような短い文章を好むのは、決して長い文章が理解出来ないからではなく、自分好みの小さいピースを集めて、自分のフレームを構築するのが心地よいからだ、という著者の考えは、懐古主義とは違う価値観を提示してくれる。
そして、録画したビデオを横目で見ながら、ネットサーファーをしてしまう罪悪感を和らげてくれる。
人間とは、そうした生き物らしい。

以下は、本書からのメモである。

ウェブ上の基本的な通貨とは、お金ではなく、喜びや落胆の小さな爆発だと言えるだろう。
(中略)Eメール好きの人にとっては、1通のメールが届くたびに、脳内の”歓喜中枢”が少々刺激され、ごほうび獲得の可能性が約束される。

IMで情報を送るときは、会話用のウィンドウがすでに開いている。
新しいEメールのウィンドウを開くためにもう一度クリックする必要はなく、そのために0.5秒を費やすこともない。
この手間という、ほんのわずかな違いが、人間のコミュニケーションを大きく変えることがわかっている。

現実として、ほとんどの教育は他の人間の物理的存在を必要とする。
生身の教師は生徒のやる気をより高められるし、教室に他の生徒がいることで、学習経験はもっと生き生きとした、記憶に残るものになる。
(中略)人間として、われわれの大半は(ただし全員ではない)、生物学的に、他者と顔を合わせる時間に前向きに反応するようにプログラムされている。

シェリングは、われわれは記憶や予測、空想、夢想を通じて、物語を「消費」していると強調する。

物語の分析は、「物語論的心理学」といわれる研究で重要とされるが、物語の概念は行動経済学にも大きく影響している。
もっとも、人は物語の形で考えるのがたいてい大好きだ。
大多数の人々は物語の形で考えるようにプログラムされており、物語についてはとりわけ記憶力がよくなる。

失音楽症といわれる症状の人々さえいる。
彼らは、聴覚障害や脳損傷の兆候はないにもかかわらず、音楽に楽しさをいっさい感じない人々である。

自閉症スペクトラム障害の人々は、自己中心性、あるいは偏見を示すことが比較的少ない。
故に、政治的客観性を持ちうるのではないか、という著者の見方は興味深い。

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