動物の集団行動に関する生物学の本かと思ったら、複雑性の科学の本だった。
それはそれで面白く、イナゴの集団行動から始まり、人間の意思決定の法則まで、複雑性の問題として解明している。
イナゴは、普段は隠れて単独で生活しているが、近くに仲間が増えると、突如パーティー好きになり、最終的には巨大な群れを形成し、移動する。
このように、群れに属することで、全く違う行動をする動物がいる。
イナゴや鳥、魚の群れなどは、群れ全体でひとつの意識があるかのように行動する。
これは、実は単純な行動規則によって実現されている。
- 他の個体に衝突するのを避ける
- 近隣の個体群が向かってる方向を平均し、その方向へ向かって動く
- 近隣の個体群の位置を平均し、その方向へ向かって動く
この3つのルールだけで、群れの動きが再現出来る。
アリがエサまでの最短ルートを見つける方法も巧みである。
アリは自分が通った道にフェロモンで印を付けているため、「フェロモンの後をたどれ」と遺伝的にプログラムされている他のアリたちは、その道をたどることになる。
長い距離を選んだアリが戻る頃には、短いルートを使ったアリの方が多数になっていて、そのルートに残されたフェロモンを増している。
さらに行きは長い距離をたどっても帰りが短いルートを通っていると、この場合もそこにフェロモンが加えられることになる。
結局、短いルートに残されるフェロモンが圧倒的に多くなるので、必然的にたいていのアリがそちらを選ぶようになるわけだ。
このように、複雑にみえる生物の、実は単純な行動原理が解説されていて面白い。
後半は、人間の判断における原理や限界、日常生活での利用方法などが紹介されている。
多数決が必ず正しい理由がシンプルに解説されていて、興味深い。
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