原題の「魔法使いとその弟子」そのままに、MITのメディアラボには現代の魔法が溢れているようだ。
奇跡的に成功している見事な運営で、メディアラボは、テクノロジーのワンダーランドと化している。
この本を読む限り、とにかく楽しそうだ。
メディアラボは、企業からの金銭的支援を受けているが、企業側に研究テーマを決められることがない。
研究者達は、分野に囚われることなく、日々発明に勤しんでいる。
様々な分野の専門家がプロジェクトに関わっているため、ひとつの発明が思わぬ方向に発展する。
電子楽器用のセンサーがマジックの椅子に使われ、エアバック用の乗客の体重・身長判断システムになる。
また、人間の障害に対するスタンスも素晴らしい。
メディアラボのヒューマン2.0の研究者たちは、この順番をひっくり返そうとしている。
彼らは精神や身体に深刻な障害を抱えている人々ために、テクノロジーを開発しようとしている。
つまり最も切実なニーズを抱える人が先で、一般のユーザーはその次というわけだ。
そういったテクノロジーの多くが実際に一般にも普及している。
しかも、普及までにそれほど時間がかからないケースも少なくない。
人類も、科学も、まだまだ捨てたものではないかもしれない、と思わせてくれる。
われわれはテクノロジーを人間化しなければならない。
人間がテクノロジーから人間性を奪われる前に。
オリバー・サックス(神経学者、作家)
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