マドンナ・ヴェルデ

マドンナ・ヴェルデ (新潮文庫)代理出産を描いた「ジーン・ワルツ」を、別の面から描いている。
「ジーン・ワルツ」では影の薄かった、娘の代理で出産する母の視点で物語が語られている。
息詰まる母と娘の対決である。
このテーマもきっちり読ませる海堂尊は、やはり凄い。

「ジーン・ワルツ」では、恐ろしいまでの冷徹さと、女性の武器を見事に使いこなす主人公の曾根崎理恵、通称「クール・ウィッチ」は、文句なくカッコ良かった。
しかし、その母の視点で描かれる本作では、かなりイメージが異なる。
論理的であるだけでなく、社会的な問題に対してひといちばい正義感を持っているが、人間として、女性としての欠如がクローズアップされていく。

娘のために代理母を引き受けた主人公が、孫であり子供である胎児のために、娘と対決することになる。
母として、女性として、医師としての立場をかけた緊張感を持った戦いになる。
古典戯曲を思わせる人間ドラマである。

それでも感動的な大団円でまとめられる海堂尊は、凄いストーリー・テーラーだと思う。

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