超常現象を科学にした男

超常現象を科学にした男――J.B.ラインの挑戦超心理学協会を立ち上げ、超心理学を科学にしようとしたラインの苦闘が描かれている。
20世紀の著名人との交流や軍との関係など、時代背景もあって波瀾万丈の生涯だった。
映画にしても面白いと思う。

ESP研究を科学として確立するために、ラインは実験に厳密さを求めていった。
私も眉唾な学問と思われがちな心理学に関わっていたので、その気持は分かる気がする。
しかし、その姿勢は、ラインを追い込むことになる。

ライン夫婦は幽霊を完全に否定していたわけではないが、どちらかといえば、常識では考えられないような心の力を信じていたのだ。
テレパシーやPKのほうが、幽霊よりももっともらしい説明だと考えていたのである。
しかし結果的にライン夫妻は、そう信じることで追い詰められることになる。
テレパシーとPKの可能性があるかぎり、死後生存の証明は曖昧になり、ラインの支援者や他の超心理学者たちとの確執を生む続けることになるからだ。

それでもラインは実験室での統制された環境下での実験を続け、統計データを積み上げていく。
ティモシー・リアリーとのLSDを使った実験、軍へのテレパシー防衛の提案、様々な霊媒や同業者との確執があったが、亡くなる前に米国科学振興会へ受け入れられた。
そのシーンは感動的である。

ところがそこで、高名な人類学者であるマーガレット・ミードが立ち上がった。
「過去10年にわたり、我々は科学を構成するものと科学的方法とは何か、そして社会はそれをどう使うかについて議論してきました。
盲検、二重盲検、統計。超心理学はそれらすべてを使っています。
すべての科学の進歩の歴史には、それまでの学問的権威がそこにあると信じなかった現象を調査研究した多数の科学者なしには語れません。
私は我々がこの協会の研究を尊重する方向で、投票を実施することを提案します」
「動議に賛成される委員のみなさんは手を挙げてください」と議長は声を上げた。
出席者は数を数えようと部屋のなかを見まわしたが、その必要はなかった。
在室の人々の多くが手を挙げていた。
「反対は?」
それなりの人数が手を挙げたが、賛成者より少ないことは一目瞭然だった。
動議は可決され、超心理学協会はようやく米国科学振興会に受け入れられたのだ。

巻末の解説も気合が入っている。
本書の弱点や抜けを指摘した上に、超心理学研究の現状報告もある。

興味深い本だった。

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