資本主義の終焉と歴史の危機

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)資本主義が限界に達し、社会システム転換の危機に瀕していることを過去の事例を踏まえつつ考察している。
資本主義に無理が来ていることは、日々の生活でも感じられることである。
過去にもあった社会の革命や近年の統計データを元に説明されると、納得出来る部分も多い。
しかし、次にどのような社会が訪れるか予言されているわけではない。

資本主義は、「中心」と「周辺」を前提とするシステムである。
フロンティアを広げて、「中心」の利潤率を上げることで拡大してきた。
しかし、地理的市場拡大は最終局面に入ってしまった。
ウォール街を中心とした電子・金融空間でも利潤が上がらなくなってきている。

資本主義は、「中心」と「周辺」を「北」と「南」の国々から、国内に求めるようになり、その結果中間層の没落を生んでいる。
格差社会は、グローバリゼーションにより国家間の格差が無くなった結果の必然だと言う。
没落しつつある中間層は、資本主義を支持するインセンティブを失い、民主主義と資本主義の乖離が発生する。

本書では、近年先進国で定着して来ている「利益率の低下」が、投資が機能しなくなったことを示していると説明している。
この辺りの説明は、私には理解しきれなかった。

利益率が低下し、投資先がないという同じような状態が過去にも存在した。
「長い16世紀」と呼ばれる時期のヨーロッパである。
その結果、中世荘園制と封建制社会が崩壊し、近代主義と主権国家に移行した。
政治・経済システムの大規模な転換である「革命」が起こった。
現代は、この時期に似ているという。

しかし、この先にどのような社会が現れるか、著者も分からないと言っている。
いま出来ることは、急激な変化による混乱を避けるために、資本主義の持つ「成長」という幻想を捨て、「脱成長」を目指すことである、と。

もはや地球上に「周辺」はなく、無理やり「周辺」を求めれば、中産階級を没落させ、民主主義の土壌を腐敗させるこにしかならない資本主義は、静かに終末期に入ってもらうべきでしょう。

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