事故で双子の姉妹を失い、足に障害を負った少女が、イギリスの田舎町でSF小説を頼りに生きていく日々が日記形式で語られる。
SF好きにはたまらない小説である。
なんと、ヒューゴー賞、ネビュラ賞、英国幻想文学大賞をトリプル受賞している作品である。
どんな作品かと読み始めると、イギリスの田舎を舞台にした少女の日々を綴った日記だった。
主人公のモリにはフェアリーが見えるようだが、それ以外にSF的要素が見当たらないのにかえって戸惑う。
雰囲気は普通小説に近い。
双子の片割れが死んでいることから、ホラー小説の古典「悪を呼ぶ少年」のような展開が予想された。
しかし、モリが熱狂的なSFファンだと発覚し、俄然惹かれ始めた。
わたしがまだ読んでいないポール・アンダースンがごっそりあった。
頭文字Aの著者が並んでいる上には、アン・マキャフリーの『竜の探索』という本が横にして押しこまれていたけど、表紙を見た感じでは、なにかのアンソロジーで読んだ記憶がある短編「大巌洞人来たる」のつづきみたいだった。
その下の棚には、ジョン・ブラナーの未読作品が一冊あった。
よくよく見れば、嬉しいことに一冊ではなく二冊、いや、三冊のまだ読んでいないジョン・ブラナーが出てきた。
わたしは、自分の目が血走ってゆくのを感じた。
SFとファンタジーをこよなく愛するモリに、読者が自身を重ねてしまうのが、両分野の大賞を受賞した理由に違いない。
この小説を読んでいると、過去に読んだSFやファンタジーを無性に読み直したくなって来る。
事故の後に厄介払いのように入れられた女子寄宿学校や遠い親戚たちとの付き合い、彼女を狙う悪い魔女である母親を、SF小説を頼りに生き抜いていく。
やがて同好の士が集まる読書クラブに出会うことになる。
SFとしての派手な設定や仕掛けはない。
しかし、SFを愛する人と愛した人には、とても心地よい小説である。
最後の最後に、普通の小説としては派手な展開がある。
彼女が日記に真実を書いていればだが。
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