ホラー小説講義

ホラー小説講義現代の博物学者荒俣宏氏によるホラー小説の解説である。
幅広い知識を元にした解説は、情報量が多過ぎて憶えるのも、伝えるのも難しい。
パルプマガジンの表紙を豊富に紹介しているのも、氏ならではだろう。

まず、「恐怖とは何か」から入る。
言語・文学は再構成された体験であり、バーチャルリアリティである。
そこでは実際の脅威だけではなく、不安が拡大し、無限のバラエティを持つ。
そして、人間のみの持つ「死後への恐怖」が大きな対象となる。

小説の誕生した時代から、近代のホラー小説について解説している。
ウソと知っている物語に入り込む読書の習慣が定着すると、ホラーとテラーという恐怖との付き合い方が生まれる。

テリル(『ダイム・ミステリ・マガジン』編集)は、ホラーとテラーをキイワードとしつつ、『ダイム・ミステリ・マガジン』がめざす恐怖の質をあざやかに説明してみせた。
「ホラーとは、一人の少女が遠い安全なところから、食人鬼どもが悪魔的儀式を犠牲者にほどこす場面をみつめたとき、全身に感じる恐怖のことである。
テラーとは、闇夜に、自分に近づいてくる食人鬼の足音を聞いた少女が、次の犠牲者は自分だと直感したときに感じる怖さである。
またミステリとは、その少女が、いったい何者が何のために自分を襲うのか、謎めいた気分になることである」

残虐趣味のホラーは、フランスのグラン・ギニョール劇場で文学の枠から抜け出し、アメリカに渡ってハリウッド映画の一翼を担うことになる。

肉体的な恐怖を描くことの多かったホラーは、精神的な恐怖を描く高度な小説へと進化した。
超自然的な恐怖を扱った小説の後には、科学がもたらす恐怖がテーマになり、フロイト以降は自分の中にある制御できないもう一人の自分も恐怖の対象になる。

残虐な表現においては、プロレタリア文学がホラーに近いという視点も面白い。
事実、江戸川乱歩は、プロレタリア文学かホラーか曖昧な小説を書いていたようだ。

本書では、前半では西洋のホラーを、後半では東洋のホラーを解説している。

演劇などの文学以外の芸術も含む著者の豊富な知識を元にした解説は、説得力があり、読者の視点を広げる。
しかし、情報量が多すぎで、私の記憶力では覚えきれないし、そのエッセンスを伝えるのも難しい。

ホラー関係のパルプマガジンの表紙が豊富に掲載されているのは、図版収集家荒俣宏ならではだろう。
スパイシー・ミステリー、ウィアード・テールズ、ダイム・ミステリーなどの趣味の悪い表紙をたくさん楽しめる。
ほとんどが、半裸の女性が拷問されているか、殺されそうになっている絵である。
「SAW」以降ハリウッド映画でブームになった拷問ホラーは、この頃から何も変わっていないと思える。

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