世界を変えるデザイン

世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある現在のデザインは、全人口の10%のために行われている。
残りの90%のためにデザインを利用し、世界を変えよう。
その取り組みについてのレポートである。
世界の現状を知って驚くと伴に、貧困撲滅のための活動を応援したくなる。

ここで言うデザインとは、見た目の問題だけではない。
製品の製造や物流、販売促進、財政支援、メンテナンスを含む広い意味での設計である。

言われてみれば、現在のデザインは先進国の消費者向けである。
世界の多数を占める貧困層に向けては、デザイナーが取り組んでいるようには思えない。
大きな理由は、お金にならないからだろう。

本書は、残り90%の人々に向けたデザインが、数多くカタログ的に紹介されている。
有名な低価格パソコン「ワン・ラップトップ・パー・チャイルド」や転がす水タンク、ハリケーン・カトリーナの被災地における家具制作プロジェクトなど、テーマは幅広い。

貧困層の子どもの死亡原因のトップは、栄養失調や下痢やマラリアではなく、屋内調理の煙を吸ったことによって引き起こされる呼吸器疾患だとは知らなかった。
燃料用のフンを農業廃棄物から作る燃料に切り替えることで、健康に害の少ない調理が可能になる。
また、この燃料を売ることで収入を得ることが出来る。
この本では、このようなデザインを紹介している。

ひと昔前の経済支援と違い、この本で紹介されているデザインは、現地の原料を使い、現地の人たちが製造・メンテナンスが可能で、経済的に持続可能な製品が多い。
一方的な経済支援は、現地の経済を向上させるよりも、依存を強めてしまった反省からのようだ。

確かにお金はあまり持っていないが、人数は遥かに多いので、うまい仕組みさえ作れれば商売になるに違いない。

世界の貧困層の生活を改善したいという動機で、手頃な価格の製品の開発を始めているデザイナーが、今は少数でも増えつつあるのはたしかに立派なことだ。
だが、安くデザインするというプロセスを推し進める、本当に長続きする原動力は1つしかない。
それがお金になるからだ。

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