解錠師

解錠師〔ハヤカワ・ミステリ1854〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)幼い時の悲劇により言葉を失った少年が、天才的な金庫破りに成長する。
金庫破りになるまでの日々とプロの金庫破りとして活動が、交互に語られる構成である。
犯罪小説というよりも、青春小説という色彩の濃い小説だった。


原題の「THE LOCK ARTIST」というのがカッコいい。
その名の通り、主人公が金庫を開ける作業は、芸術家の創作のように描かれている。
指先の微妙な感触を頼りに、根気強く謎を解いていく。
犯罪ではあるが、職人的なストイックさがある。
自分の能力を楽しんでいるものの、巻き込まれて仕方なく始めた仕事なので、本人に倫理的葛藤はない。

この小説の大きな特徴は、主人公が子どもの頃の事件によって、言葉が喋れないことである。
原因は心理的なものなので、いつか喋れるようになるかもしれない、とほのめかされている。
しかし、喋れないことは、周囲の人間に受けがいい。
憧れの彼女にも喜ばれる。
人々は、どれだけ人の話に辟易しているのだろう。

「おしゃべりじゃない人のそばにいるのっていいね」

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