見てしまう人々

見てしまう人びと:幻覚の脳科学「レナードの朝」の原作者として有名な精神科医サックスの最新作である。
本作では、あらゆるタイプの幻覚について語られている。
彼や他の医師や心理学者によって報告された幻覚は、すべて現実であり、本人には辛い症状の場合もある。
しかし、幻覚にはどこか惹かれるものがある。
また、幻覚は異常な現象ではなく、健常な人間でも日常的に体験する可能性があることがわかる。

サックスの報告する人間の行動は、とても興味深い。
病気で苦しんでいる人も多いだろうが、その行動にこれだけ惹かれるのは、人間の本質に関わる現象なのだろう。
小人の幻覚の普遍性からも、幻覚がもとになって伝説や宗教が造られたというのも説得力がある。

本書は、以下の構成で様々な種類の幻覚を紹介している。

・静かな群衆ーシャルル・ボネ症候群
・囚人の映画ー感覚遮断
・数ナノグラムのワインーにおいの幻覚
・幻を聞く
・パーキンソン症候群の錯覚
・変容状態
・模様ー目に見える片頭痛
・「聖なる」病
・両断ー半視野の幻覚
・譫妄
・眠りと目覚めのはざま
・居眠り病と鬼婆
・取りつかれた心
・ドッペルゲンガーー自分自身の幻
・幻肢、影、感覚のゴースト

しかし、大部分のCBSの幻覚は恐怖心を生じさせるものではなく、慣れてしまうとちょっと楽しくなる。
ディビッド・スチュワートは自分の幻覚を「とにかく友好的」と言い、自分の目がこう言っているのだと想像している。
「がっかりさせてごめん。失明が楽しくないことはわかっているから、このちょっとした症候群、目の見える生活の最終章のようなものを企画したよ。たいしたものではないけど、私たちにできる精いっぱいなんだ」

出眠時心像は本質的にとっぴで、しばしば恐怖を呼び起こし、そのような状態で人は暗示にかかりやすくなる可能性があることを考えると、天使や悪魔の出眠時幻影が、戸惑いや恐怖をもたらすだけでなく、そういうものが物理的に実在するという確信を人に抱かせるのは、まったく無理からぬことだ。
それどころか、ほかならぬ怪物や幽霊、あるいはお化けという概念はかなりの程度そういう幻覚に由来しているのではないかとまで考えざるをえない。
生理学的基盤があるとはいえ、そのような幻覚が、亡霊の世界を信じる個人や文化の傾向と相まって、超自然的存在への信仰を強めることがあるのは、容易に想像できる。

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