その女アレックス

その女アレックス (文春文庫)4つのミステリーランキングで第1位を獲得した作品である。
看護師の女性アレックスは、突然誘拐され、裸で木箱に入れられ地下室の天井から吊るされる。
徐々に衰弱するアレックスを、フランス警察は救出できるのか。
しかし、本書の本質は救出劇ではない。
二転三転する展開に、読者は翻弄される。

まず思ったのは、「また監禁か」ということだった。
少し前に読んだ北欧のミステリーでも女性が誘拐、監禁されていた。
ヨーロッパでは、女性は監禁するルールなのだろうか。
女子供が虐待される状況は、小説であっても辛い。

物語は、「アレックスはどこだ」から「アレックスとは何者だ」にテーマが変わってくる。
しかし、残念ながらネタバレせずにその先を語ることが出来ない。
帯にも「101ページ以降の展開は誰にも話さないでください。」とあるので、ここは出版社の意向を尊重することにする。
ただ、一筋縄ではいかない小説であるのは確かである。

感情の置き方に困る小説であった。
誘拐・監禁の被害者であるアレックスの正体が分かるにつれ、彼女をどう考えたらいいのか迷ってしまう。
木箱に閉じ込められ虐待されている彼女が、いかに生きのびるか努力する姿を見ると応援せざる得ない。
だがしかし、その後の展開で、彼女に感情移入すべきか悩むことになる。
最後には全てが明らかになり、行動の動機は理解出来るのだが。

アレックスには、別の人生はなかったのだろうかと思う。
架空の人物だと分かっていても、彼女には幸せになって欲しかった。

この酷い小説がベストセラーというのはどうなんだろう。
どれだけの人が、この本を読んでブルーになったことやら。
読後にこれだけブルーになったのは「堕ちた天使(エンジェル・ハート)」以来だ。

警部の趣味がスケッチだというのもフランスらしい。
精神を落ち着かせるため、いつでも絵を描いている。
部下の2人の刑事も個性的である。
金持ちでおしゃれ、どこまでも育ちがいい刑事とだれかれ構わずたかる機会を狙っている貧乏な刑事。
この小説は、妻を殺されて警部の再生の物語でもある。
こちらのパートについては、最後は泣かせるいい話である。

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