わたしを離さないで

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)書き方こそ思わせぶりだが、孤児院に引き取られた少年少女の成長がテーマだと思っていた。
ところが、読んでいるうちに恐ろしい秘密が少しづつ明らかになる。
何よりも恐ろしいのは、登場人物たちが自分たちの境遇を受け入れ、淡々と日々を暮らしていくことである。

最初の方では、孤児院らしき施設での子供たちの生活が描かれている。
ちょっとした冒険やイジメ、先生たちの噂などの他愛のない日常に思える。
成長すると恋愛の問題も入り込んでくる。

全く前知識無く読み始めたので、何をテーマとする小説か理解出来なかった。
秘密は少しづつ明らかになってくる。
子供たちに対して長い時間をかけて真実を刷り込んだように、読者にも多くのヒントが提示されていた。

ここからはネタバレである。
ネタバレしなければ、感想を書くにくいタイプの小説なので仕方ない。

この施設は、臓器移植のためのクローン人間を育成するためのものだったのだ。
子供たちは、大人になると臓器を提供することになる。
一度の臓器提供で死ぬことはなくても、二度、三度と提供することで確実に死を迎える。
その状況を受け入れ、生きていく人間の物語である。

秘密が明かされたところで、それが打破されるわけではないのが普通のSFと違うところだ。
いづれ訪れる死を穏やかに待つ姿は、核戦争後の死を待つ「渚にて」に似ている。
切なく、救いようのない小説だった。

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