自分の仕事をつくる

自分の仕事をつくる (ちくま文庫)「働き方研究家」を自称する著者によるモノづくりの現場でのインタビューと考察をまとめた本である。
現代の効率重視の生産方法に疑問を投げかける。
手で触れるモノではないが、アプリケーションを作っている私にとっても考えさせられる内容だった。

対象となる職場は、IDEOやパタゴニア、Wired、ファインモールド社(プラモデル)など、デザインやモノづくりに関わる場所が多い。

「いいモノを作る人は働き方が違う」という考えを元に、インタビューを重ねた結果、まず「働き方」を形づくることにセンスを投入していることが分かってきた。

あるデザイン事務所では、つくる力は「観察力」から生まれると考え、色指定ではなく実際のモノで理解を共有している。
モノの持つ手触りや重さ、味わいなども含めてメンバーで共有する。

ここではコンピュータによる制作の問題点が指摘されている。
コンピュータでは作業の効率化のために、選択肢を減らしている。
文字の大きさなどはメニューから決まった大きさを選ぶので、その間にある大きさは意識されない。
コンピュータという道具によって世界観が狭められている。

スケッチをしないデザイナーもいる。
デザインは作りながら考えるもので、プレゼンのためのデザインは嘘になると言うのだ。
身体的感覚からこそ美意識が生まれるという考えも紹介されている。

いいモノを作る人たちは、仕事を「自分の仕事」としている。
「自分の仕事」であることで、仕事に意味が生まれる。
自分が作ったモノが、”大事”か”大事じゃないか”を常に気にしているデザイナーもいる。

自分の感覚を出発点としているのも共通点である。
自分のために道具を作り、それを欲する人が増えてマーケットがになる。
理想的なモノづくりだ。

この彼も八木氏のように、色見本ではなくまったく別のもの、たとえば桃の果実をスタッフに手渡しながら、「このピンクが・・・」と色指定をすることがあったという。この時、手渡される”桃”には、ピンクという色を越えた情報が含まれている。その質感と手触り、味わい、重さ、儚さ。これらすべてを含んだ情報が、まるごとの経験としてスタッフに伝えられ、共有される。

アプリケーションにはそれを使い易くするためのインターフェースがあり、たとえばフォントなら10・12・14・18・・・といったサイズが、プルダウンメニューで選択できる。(中略)
これらは、道具の精度によって、モノづくりの精度が規定されることの一例だ。使い易いということは、何かを捨てているわけだが、はじめて使うデザインの道具がコンピュータという世代の彼らにとって、省略されたインターフェースは、モノづくりをめぐる前提条件として学習・認識されてしまう。

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