書くことについて

書くことについて (小学館文庫)かつて「小説作法」というタイトルで販売されたいた本の新訳版である。
「小説作法」は読んでいたのだが、追加された情報が多いということなので、新訳版を読んでみることにした。
かなり昔に読んだ本なので、内容もよく覚えていないから新鮮な気持ちで読むことが出来た。
アメリカのベストセラー作家スティーブン・キングによる小説の書き方の指南である。

最初の「履歴書」では、かなりのページ数を割いて、キングの半生が語られている。
いくつかのエピソードが断片的に語られ、散文的であるが、そこはキング、しっかり読ませるものになっている。
あの「クージョン」はビールを飲みながら書いたので、書いた時の記憶がほとんどないというのは驚く。

その後、小説を書く上での技術的なアドバイスが続く。
英語ならではの方法は参考にならない。
副詞は使うな、会話を説明する言葉は”言った”がいちばんいい、など細かいアドバイスは有効だと思える。
しかし、結局のところ、作家になる方法は、以下の一文に集約されている。

作家になりたいのなら、絶対にしなければならないことがふたつある。たくさん読み、たくさん書くことだ。私の知るかぎり、そのかわりになるものはないし、近道もない。

キングはプロットを作らない作家らしい。
ストーリーテーラーにはこの方針の作家が多い。
物語を”掘り出していく”スタイルだ。
それでは小説作法もないものだ、と思えるのだが、それで成功している人が多いのも事実である。

プロットに重きを置かない理由はふたつある。第一に、そもそも人生に筋書きなどないから。どんなに合理的に予防措置を講じても、どんなに周到な計画を立てても、そうは問屋がおろしてくれない。第二に、プロットを練るのと、ストーリーが自然に生まれるのでは、相矛盾することだから。この点はよくよく念を押しておかなければならない。ストーリーは自然にできていくというのが私の基本的な考えだ。作家がしなければならないのは、ストーリーに成長の場を与え、それを文字にすることなのである。

世界有数の売れっ子作家になったキングだが、売れ始めた後も順調ではなかったようだ。
事故やアルコール中毒、麻薬中毒により幾度か危機に陥っている。
そういう時は奥さんに助けられているようだ。
一番の読み手が奥さんというのは、素晴らしい環境だと思う。

キングのお勧め本リストが巻末についている。
しかし、キングのお勧めはあてにならない。

本書のかなりの部分は(少し長すぎたかもしれないが)私がどうやってそれを学んだかということに費やされている。そして、その多くはどうすればもっと巧く書けるかということについての記述である、残りは(ここがいちばん大事なところだが)許可書だ。あなたは書けるし、書くべきである。最初の一歩を踏み出す勇気があれば、書いていける。書くということは魔法である、すべての創造的な芸術と同様、命の水である。その水に値札はついていない。飲み放題だ。
腹いっぱい飲めばいい。

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