ハーモニー劇場版

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)伊藤計劃映像化プロジェクト第2弾。
「屍者の帝国」は伊藤計劃原案なので、彼が執筆した作品としては初の映像化だと言える。
かなり昔に原作を読んだので、いい感じに内容を忘れており、新鮮な気持ちで楽しむことが出来た。
全編を緊張感が貫く珍しい映画だった。
現在、ちゃんとしてSF映画を作れるのは日本のアニメだけかもしれないと思える作品である。

大規模な動乱により著しく人口が減少した人類は、常時人間の身体の状態を監視するWatchMeを体内に埋め込み、異変を撲滅することで不老不死を獲得した。
少女3人が自殺により管理社会から逃げ出そうとしたが、主犯のミァハ以外の2人は未遂に終わる。
時は流れ3人のうちのひとりであるトァンは、生命至上主義の管理が行き届いた日本を離れ平和維持活動を監視する監査官として、紛争地域を渡り歩いていた。
横流しが見つかり謹慎を言い渡されトァンが日本に戻った時、多くの人間が一斉に自殺するという事件が発生した。
事件を起こしたテロリストからの、期日までに誰かを一人殺さないと強制的に自殺させるという脅迫により世界はパニック状態に陥る。

昨今珍しい娯楽映画ではないSF映画だった。
最新の脳科学の知見を元に、意識とは何か、人間は何を選択すべきか、という問題を突きつけてくる。
全編を緊張感が貫き、観るものに集中を強要する。
SFにはこういう表現があったのだと思い出させてくれる映画だった。
SF的なフォーマットを使いながら娯楽映画を量産するだけのハリウッドとは全く違う方向性である。

ユートピアとなった日本の風景が70年代のSF風の建物や服装になっている。
全体のトーンがピンクなのだが、可愛らしいというより不吉な感じさえある。
非常にバランス良く、隅々までデザインされている。

本来は「虐殺器官」の続編的位置づけなので、「虐殺器官」から観たかったが、制作会社が倒産してしまったのなら仕方ない。
制作を引き継いだ会社が早く完成させることを祈るばかりだ。

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