掟上今日子の備忘録[ドラマ版]

掟上今日子の備忘録 Blu-ray BOX「化物語」のオマケについていた1話を読んだ時は、西尾維新にしては普通過ぎると思った。
放映前に公開されたビジュアルもコスプレっぽくて、見る気をなくしていた。
ところが、従姉妹に薦められて最終回近くから見てみたら、ビックリするほど面白く、huluでイッキ見してしまった。
まさか、西尾維新原作で、こんなにちゃんとしたドラマが出来るとは思わなかった。

探偵掟上今日子は、眠ると記憶がリセットされてしまう。
そのため、事件を1日で解決する最速の探偵である。
隠館厄介は、不幸を呼びこむ体質で、事件に巻き込まれては犯人にされてしまう。
自身の冤罪を晴らすため、厄介は今日子に助けを求める。
何度も事件に巻き込まれ、今日子に助けてもらううちに、厄介は今日子に恋心を抱くようになる。
しかし、1日で記憶がリセットされるため、彼が報われるのは難しい。

1日しか記憶が保持出来ないというテーマでは、「メメント」が有名である。
眠ると記憶がリセットされてしまう男が、妻を殺した犯人を追うミステリーだ。
この映画の中では、主人公は、忘れてはいけないことを自分の身体に刺青で残しておく。
どうして、このような目新しくないテーマを西尾維新が扱うのか、不思議だった。
しかし、このドラマを見て、このテーマの奥深さに気がついた。

周囲の人間から見ると、記憶がリセットされるのは深刻な障害であり、恐ろしく不幸な状態に思える。
ただ、今日子さんも言っているように、「毎日を新鮮に生きられる」のだ。
そして、眠ると記憶がなくなるということは、自分自身の連続性から考えると死ぬのに近い。
1日で死ぬのだから、その1日を精いっぱい生きようという意欲が湧いてくるかもしれない。
今日子さんには今日しかない、のだ。
ガンジーやジョブズも言っているように、明日がないということは、人生に強烈な集中力をもたらす可能性がある。

しかし、毎朝自分の状況を確認し、手探りで行動を開始するのは、とても不安だと思う。
そして、そこで蓄積された知見やノウハウはその日に失われ、翌日には最初から始めなければいけないのだ。
その状況を「良し」と笑顔で受入れる今日子さんは、感動的にカッコいい。

シーズン1では最大の謎は解決されなかった。
原作が終わっていないので当然なのだが、続きはドラマ化するのだろうか?
ドラマ化しないのなら原作に手を出すが、ドラマ化するのならば、ドラマを先に観たい。

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