全脳思考

全脳思考久しぶりに神田昌典の本を読んだが、やはり面白い。
彼の奇抜な発想には感服していたが、この本を読むと、彼の文章の上手さにも感心する。
とてもスムーズに読めて、読み始めると止まらない。
この本では、知識社会におけるフレームワークの問題と、新しいフレームワークの提案を行っている。
彼の提案する「全脳思考」は、最新のマーケティング手法をうまく組み合わせ、行動に移しやすいフレームワークとなっている。

現在多く使われているフレームワークは、本来コンサルタントが現状分析と説明のために利用する方法であり、現場で活躍する担当者が行動を起こすための手法ではない。
これが、この本での問題提起である。
担当者が必要とするのは、完璧ではなくても仮説を作り、実行して修正するためのフレームワークである。
そのために、著者は社会変革のための理論であるU理論をベースに、新しいフレームワークを提案している。

シャーマーは、社会変革における思考のあり方と知識社会における創造の方法として「U理論」を提唱した。
「U理論」には、以下のような段階がある。
・ダウンローディング(知っている)
・事実的(なるほど)
・共感的(気持ちはわかる)
・創造的(つながる)

現代において、事業が成長するためには、次の原則があるというのが著者の考えである。
・指名検索
・検索を促すネーミング
・自己投影型消費を支える物語
・物語にスムーズに入り込める導線
・サブエピソードを共有する場

「全脳思考」では、グラフを使ってユーザの心情の変化を表現し、商品・サービスの企画を行う。
顧客のHappyな状態をゴールとして、そこに至るまでの道筋を、一本道ではなく起伏のあるストーリーとして構想する。
具体的には、以下の手順となる
0.準備
1.顧客の未来
2.顧客の将来
3.クライマックス
4.気づきのホップ・ステップ
5.オープニング(最初の情報)

言葉を使って思考すると既存の概念に縛られてしまうため、イメージを使って思考の飛躍を狙うCPSの手法も興味深い。

最後の「社会変革のためのマーケティング」における「深層背景」についてはよく分からなかったが、マイノリティを活かすことで変革を促す視点は面白い。

知識社会では、比較されるポジションをわざわざ狙うのは愚の骨頂である。知識社会では、購入前にネットで情報検索されることがほとんどであり、比較される商品は価格競争に巻き込まれ、利益は限りなくゼロにちかづいていくからだ。

指名検索された場合、SEO対策はさほど講じなくても、当然のように検索上位トップ5番以内に入る。競争がほとんどないため、価格競争は経営者の関心の外になる。価格を下げるどころか、ブランド維持のため、類似商品の中で最高価格を目指す。そもそも指名なので、当初から顧客との長期的関係を築きやすく、ビジネスとしては急速に安定する。

自己投影型の消費とは、まさに未来において、本当の自分になるために、投影できる物語を持った商品や企業を応援することだ。その商品を購入することによって、可能性と明日への活力が生まれると言い換えてもいい。

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