けもの道の歩き方

けもの道の歩き方 猟師が見つめる日本の自然「けものの道の歩き方」というから、山で獣を追跡する本かと思ったら、そうではなかった。
著者が行っている猟は銃を使った方法ではなく、罠を使う方法だった。
人間と野生動物の共存について、考えさせられる本だった。

自分で食べる肉は、自分で獲りたい、という著者だけあって、日本の山ではどのような動物の狩猟が可能で、どんな味がするかの説明が多い。
日本の町は、ほとんどが山に隣接しており、その山で動物を獲るのは難しくないらしい。
専業ではなく、あくまで自分と家族の食べる分だけを獲るのであれば、それほど重労働でもないようだ。

そんな猟師としての生活についての描写もあるが、野生動物と人間の共存についての問題提起が多い。
野生動物の数や生活圏は一定ではなく、人間側の都合によって変わるものである。
狩猟の対象となれば絶滅に近づくこともあり、保護の対象となれば増えすぎて獣害となることもある。
正解のない問題である。
今後、日本の人口減に伴い里山の環境は変化する。
その時に野生動物の生活圏や数がどのように変化し、人間はどう付き合うべきか、考えなければならない問題だと思う。
しかし、多くの人間の関心がある問題ではないので、政治的にも対応が難しいだろう。

山で獲った動植物は安全だろうと思っていたが、食物として流通していないからこそ気をつけなくてはならないとは思いつかなかった。

狩猟なんて山間部の田舎の集落で行われているもので、街で暮らしていたらとてもできないと思っている人も多い。しかし、本当にそうだろうか。インターネット上の航空写真で日本列島を北から南まで眺めてみてほしい。ほとんどの都市のすぐそばまで広大な森が接近しているのが分かるだろう。そして、その山際には野生動物たちがひしめき合っている。

狩猟採集生活には様々な汚染がつきまとう。
河川敷にたくさん生えているヨモギやノビル、ツクシは人気の野草だ。しかし、昼間にそれを見つけたからといって、喜び勇んで摘んでいるようではいけない。早朝や夕方、時間帯を変えて来てみれば、犬を連れたたくさんの愛犬家に出会うだろう。河川敷はたいがい定番の散歩コースで、遊歩道沿いの野草は小便まみれということもよくある。
車道沿いに生えるドクダミも排気ガスを直接浴びて汚れているし、田端の畦や用水路に生えるセリやクレソンは農薬を気にする必要があるだろう。

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