ネットで進化する人類

角川インターネット講座15 ネットで進化する人類 ビフォア/アフター・インターネット<角川インターネット講座> (角川学芸出版全集)角川インターネット講座の最終巻は、MITメディアラボ所長伊藤穰一による今後の展望である。
インターネットの未来というよりも、テクノロジー全般の進化について考察している。
インターネットについての講座なのに、最後はバイオテクノロジーなのが面白い。
今後爆発的に進化するのは、やはりバイオテクノロジーなのかもしれない。

テクノロジーに関する様々な分野で、今後の進化と人間の関わりについて考察している。

テクノロジーとアートの関係では、「生理の疑似体験」という面白い試みが取り上げられている。
女性の生理を疑似体験することで、男性の女性に対する理解が進むかもしれない、という考え方だ。
テクノロジーを使って他者の状況を経験することで、より理解が進むのかもしれない。

アルゴリズムの戦いでは、株式の市場取引におけるコンピューター同士の戦いが解説されている。
コンピューターによる市場取引では、あまりにスピードが速いため人間の判断が入る余地がない。
このように人間不在の判断が、今後は増えていくかもしれない。

個人情報の権利とコントロールの問題では、自律と他律のバランスが論じられている。
行動記録などの個人情報は、何をどこまで公開するかはユーザが主体となるべきだろう。
無意識情報の補足まで可能となることを考えると、真剣な検討が必要な分野だ。

認知能力の拡張が次の進化だとする議論もある。
仮想現実ではなく、テクノロジーによって他者の感覚を利用できるようになる。
自分がその場にいなくても、そこに居る人の視覚、聴覚、触覚などを共有することができる。
また、外科手術などでも、専門的な手術だけ遠隔地の専門家が行うことで医療サービスも向上する。
自己と他者の身体的境界がなくなる未来が訪れるかもしれない。

3Dプリンターを、自己を複製する機械である、という捉え方も面白い。
機械であるにも関わらず、生物の要件である自己複製が可能になってくる。
3Dプリンターは、オープンソースが基本なので、世界中で進歩と分化が起こっている。
これも生物のあり方に近い。

最後はバイオテクノロジーである。
伊藤穰一自身がDNA合成キットを購入し、自宅のキッチンで新しいDNAを設計し、培養に成功している。
学生によるDNA合成の大会も盛んらしい。
ここまで手軽だと恐ろしい気もする。
バイオテクノロジーはエレクトロニクスと融合し、お互いの得意な分野で補完し合うことで、爆発的な進化が予想される。
生物の合成は、倫理的・宗教的インパクトが大きい。
21世紀の世界のあり方に影響を与える重要なポイントであることは間違いない。

「生理マシーン、タカシの場合。」は、女の子になりたいタカシという男の子(スプツニ子!演じる)が、生理マシーン(血液を滴下しながら鈍痛を体感させるデバイス)を制作して生理を擬似体験するというストーリー。テクノロジーでジェンダーを超越しようとする男子が主人公の作品だ。(中略)
当時のネットにあふれたコメントは、次のようなカジュアルなもの。男子高校生からフェミニズム学者、デザイン関係者まで、さまざまな人がコメントしていた。
「コイツはなんで生理なんて痛くて面倒くさそうなものを体験したいんだよ?」
「アソコを蹴られた痛みのほうが、絶対生理痛より痛い!」
「いや、女性の生理を体験するマシーンはあっていいんじゃないか? 男女が理解し合うと世界がもっと平和になるかも!」
「こいつはつくったほうがいい。ボーイフレンドに着けさせたい」

突然始まった3Dプリンターの驚異的な広がりを予想したものは、全くと言ってよいほど見つからない。(中略)
引き金となった要因は2つあるといわれている。ひとつは、3Dプリンターに関する基本特許が20年の存続器官を終えて切れたこと。そしてもうひとつが、ほぼ時を同じくして、設計図やソースコードをすべて公開した「オープンソース」3Dプリンターが世界に誕生し、その「遺伝子」がネットワーク上に広く拡散されたことである。

2日半の作業で、われわれは10年前だったらノーベル賞ものだった仕事をキッチンでやってのけた。遺伝子配列を設計し、それを実際に合成し、バクテリアに導入したうえでそのバクテリアをリブートしてみせたのだ。

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