村上海賊の娘

村上海賊の娘 上巻「のぼうの城」の作者による新作時代劇。
今度は海賊だ!
相変わらず人物の造形が巧い。
主人公のやんちゃな姫をはじめ、愛すべきキャラクターばかりである。
そして、海戦の描写が凄まじい。
戦国時代の海賊同士による戦いは、手に汗握る激しさである。

戦国時代、信長は大阪本願寺を包囲していた。
外部からの連絡を断たれたため本願寺の食糧が底をつく日は近い。
唯一の入り口である海から兵糧を入れてもらうため、本願寺は毛利に協力を依頼する。
しかし、毛利の船だけでは食糧を運びきれず、村上海賊にも手伝ってもらう必要がある。
様々な政治的な思惑がある中、村上海賊の長の娘である景は、ひとり彼女が美人として祭り上げられるという堺に向かうが・・・

この小説でまず楽しいのは、海賊たちの心意気である。
戦国時代なので、自分も含めて命が軽い。
だから死ぬことを恐れず、楽しげに戦いに挑む。
この粗野で単純な感じは、黒澤明の映画を想わせる。
だが、どちらの陣営も個性的なキャラクターが多いので、誰にも死んで欲しくはないと思ってしまう。

まだ銃器の発達していない時代、白兵戦を基本とした海賊同士の海戦は迫力がある。
精密な機械こそないものの、それぞれの地域で工夫された武器や戦い方がある。
また、陸戦との違いも描かれており、なかなか面白い。

主人公の景が美人でないのも良い。
長の娘だから「姫」と呼ばれているものの、故郷ではブサイクだと思われている。
しかし、泉州の侍からは美人だと言われているので、エキゾチックな見た目なのだろう。
明るく、元気で、強い。
海賊なので当然人を殺す。
そういう約束事の世界で生きているので、全く影がない。
しかし、納得ずくではない戦いに巻き込まれた者については、全く違う感情を持つことになる。

村上海賊の秘密兵器「鬼手」の発想が面白い。
単純であるが、説得力がある。
そして、物語としてはとても盛り上がる兵器だ。
オチなので言えないが。

映像化して欲しい気もするが、きっと原作は越えられないだろうな。

「斬り合いと行こう。いいんだぞ、オレたちを通さなくたって」
命を軽々と扱い、簡単に闘争に及びさまは、当時日本に来たヨーロッパ人が一様に驚嘆するところだ。景もまたそんな日本人の一人である。あっさりとそう言ってのけた。

討ち取った敵をまとめて埋葬した墓所に耳塚というものがあるが、これは正しくない。本来は、
「鼻塚」
である。
当時の武者は首級の代わりに鼻を削ぐ場合があった。理由は単純だ。一人に一つしかなく、軽いからだ。鼻を削いだ相手が男であるのを示すために、上唇ごと削いで、髭をつけたまま持参するのが心得とされた。

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