脳はあり合わせの材料から生まれた

脳はあり合わせの材料から生まれた―それでもヒトの「アタマ」がうまく機能するわけ一般に思われているように、生物のデザインは完全ではない。
既にあるものを使って環境に適応しようとした結果、いびつな状態になっていることも多い。
生き残ることが出来れば、完全である必要はないからだ。
この本では、この問題について、特に人間の脳と心にフォーカスして解説している。

この本では、特に以下のテーマで人間の不合理さを追求している。
・記憶
・信念
・選択
・言語

人間の記憶は、コンピュータのようにアドレスで管理されているわけではない。
思い出したいことをキーを使って引き出す「文脈依存記憶」である。
この記憶の方法は、キーを間違えやすく、文脈を間違えると誤った記憶を作ってしまう問題さえある。
狩猟生活をおくっていた先祖では、電話番号のような細かいことを覚える必要はなく、大雑把な記憶を迅速に引き出されば良かったので、この方法で十分だったのだろう。

ところが、人間の信念は、この不安定な記憶を元に形成される。
従って、客観的な事実よりもインパクトのある情報や、最新の記憶に影響されることが多い。
また、人間は、進化した「熟慮型システム」と古くからある「反射型システム」の2つを持っている。
疲れている時やストレスのある時は、「熟慮型システム」ではなく「反射型システム」を選んでしまうため、不合理な選択をしてしまう傾向がある。

選択に関しては、目先の快楽を優先してしまう傾向がある。
将来が予想出来なかった我々の祖先の生活では、目の前にある食べ物を得るのが合理的な行動だった。
しかし、現代においては、その判断は成人病の原因となってしまう。

人間の言語が、多義性を含む不明瞭であるのも、進化と同じで行き当たりばったりに状況に適応した結果だという。

快楽は人間の行動の源泉だが、祖先の時代と現代では優先すべき行動が異なってきている。
しかし、生物学的しくみである脳は変化についてこれないため、現代においては不要な行動を促す快楽に振り回されることになる。

以上のように、人間の脳における様々な問題点を究明している本書だが、悲観しているばかりではない。
最後に思考する生物として進歩するための13の提案がなされている。

1.可能な限り代案をさぐる
2.問いを書き直そう
3.相関が必ず因果関係を意味するとは限らないと心得る
4.サンプル数を忘れない
5.自分が衝動的であることを見越してあらかじめ計画を立てる
6.目的を設定するだけでなく、予備案も準備する
7.疲れているときや、気が散っているときには、できれば重要な決断は下さない
8.つねに代償に対する利益を見定める
9.あなたの選択は抜き打ちチェックを受けるものと心得る
10.自分と距離を置く
11.印象深いもの、個人的なもの、逸話には用心する
12.どちらかに決める
13.理性的であるように努める

このことを私は、「進化の慣性」と呼ぶ。ニュートンの「慣性の法則」(静止した物体は静止したまま留まろうとし、動いている物体は動き続けようとする)にちなんだ発想だ。進化はゼロから始めるのではなく、手近にあるものから出発して改良を重ねていくのである。

現代人がとにかく理にかなわぬ行動をする3番めの理由に、第1章で触れた「進化の慣性」がある。私たちは、現代生活ではもはや(ありがたいことに)ほぼ遭遇することもない不確実性に適応させられてしまっているのだ。ごく最近まで、私たちの祖先は翌年の収穫を確かなものと考えるわけにはいかなかった。(中略)冷蔵庫も保存料も食料品店もなかった時代、ただ生きていくだけのことが現在に比べるとあまりにも不確かだったのである。

進化はそれぞれに異なる能力を持つ2つのシステムを私たちに与えてくれた。反射型システムが日常の処理に優れている一方で、熟慮型システムは経験したことのない事態を対処するうえでの助けとなる。

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