桜ほうさら

桜ほうさら(上) (PHP文芸文庫)宮部みゆき得意の人情時代劇。
SF、ファンタジーと違いこのジャンルではハズレがない。
ただ、今回のはキャラクターが少し弱い気がする。
同じ江戸の下町を舞台にした「ぼんくら」シリーズと比べると、登場人物が若干おとなしい。
今回のテーマが家族の功罪だから仕方ないかもしれないが。

地方の藩の武士である古橋笙之介は、横領の罪で自害した父親の無実を証明するために江戸に上京した。
父親を横領の罪に陥れた文書は、父が書いた記憶がないにも関わらず、父の筆跡そのままだった。
他人の筆跡そのままに偽の文書を作れる者の仕業と考えられる。
武術は全くダメだが、字の巧い笙之介は、長屋に住まい、写本を生業として犯人を探し続ける。

今回は、文字をテーマにした4つの中編による連作小説である。
江戸の下町の暮らしが活き活きと描かれており、読んでいて楽しい。
ヒロインは、障害を持つ深窓の令嬢かと思えば、なかなか気の強い女の子だった。
なかなか進まない2人の関係も可愛らしい。

しかし、必ずしも家族が完全な善ばかりではない、というテーマは重い。
父親、母親、兄のそれぞれに想いがあり、必ずしも同じ方向を向いているわけではない。
最後に綺麗にまとめるような都合の良いラストとはせず、それでも読後感が爽やかなのは、さすが宮部みゆきである。

なんと、いつの間にか、NHKでドラマ化されていたらしい。
主演が玉木宏では少し歳を取り過ぎている気もするが、ちょっと観てみたい。

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