ホラーの帝王スティーヴン・キングの息子によるダーク・ファンタジー。
迫力のある文章と凝った構成の小説で、決して親の七光りで売れているわけではないことを証明している。
途中までは読むのが辛いところもあるが、最後まで読むと感動的である。
恋人のメリンを殺したと疑われている青年イグは、朝起きると自分の頭に角が生えていることに気づく。
角が生えてからのイグは、人間の本心を引き出す能力を得る。
それも普段は隠している醜い欲望や怒りを引き出し、破滅的な行動へ誘導する悪魔の力である。
イグや友人や家族からさえも酷い言葉を投げつけられる。
そして、図らずも恋人を殺した犯人を知り、復讐を決心する。
この小説は時代が異なる5つの章で構成されている。
・地獄
・チェリーの木
・炎の説教
・修理する者
・ミックとキースによる福音書
そのうちひとつは、犯人の主観で語られる。
「地獄」では人間の嫌な面が、これでもかと描かれる。
やさしかったお婆さんまで、実はイグを嫌っていたことが分かる。
ここまで酷いと、かえって心地良い。
打って変わって「チェリーの木」は、イグが子供の頃の話しである。
「スタンド・バイ・ミー」のように子供生活や友情が活き活きと描かれている。
この頃の人間関係がベースとなって、その後の悲劇に繋がっていく。
何度もメリンが殺されるシーンが語られるので、読んでいて辛い。
語る人こそ違え、彼女が死ぬ結果に変わりはない。
ひょっとしたら嫌な女かと思っていたメリンの真意が分かるラスト近くは感動的である。
そして、奇妙なハッピーエンドとなる。
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