パンドラの少女

パンドラの少女少女を主人公にしたゾンビ小説である。
ゾンビものには、ゾンビの視点で語れれる分野があるが、ロメロ系ゾンビ映画の好きな私にはどうもしっくりこない。
しかし、この小説では、健気な少女を主人公にしたことで、うまいバランスとなっており、楽しませてくれる。
大好きな先生を食べてしまわないように、身体を拘束するように、自ら申し出るのだ。

物語は、主に10歳の少女メラニーの視点で語られる。
彼女は孤児の寄宿舎のようなところで生活しているようである。
しかし、自分の個室から教室に向かう時は、兵士が彼らを車椅子に座らせ、両手両足と首を固定して移動する。
彼女の居るのは、寄宿舎ではなく実験施設だった。
世界を襲ったパンデミックにより、ほとんどの人間は他人を襲う<飢えたやつら(ハングリーズ)>と化してしまい、人類の文明は崩壊した。
キノコを由来とするこの奇病は、人間の脳を支配し、相手を噛みつくことで感染する。
しかし、一部の子供たちは、感染しても知性を失わないことが発見された。
メラニーが居たのは、そのような子供たちを観察・実験する施設だった。
メラニーはその中でも一番頭が良く、天才と呼ばれている。

子供たちを研究するチームのリーダー・コールドウェルと施設を守る軍人のトップであるパークス、子供たちを人間ではないモノとして扱う。
それに対して、子供たちからも人気のある教師ジャスティーノは、ちゃんと子供として扱うことを主張する。
両者の間の溝は広がり、ついに爆発した時に、<廃品漁り>と呼ばれる荒野に生きる人類の末裔に施設は襲われる。
辛うじて施設を逃げ出したメラニー、ジャスティーノ、コールドウェル、パークスと新米の軍人ギャラガーは、遥か遠い人間の都市まで逃避行を強いられる。

普段は明晰なメラニーだが、人間の匂いを嗅ぐとハングリーズとしての本能に支配されてしまう。
大好きなジャスティーノを食べてしまわないように、口を覆うマスクと手枷足枷を自ら要求する姿は健気である。
そして、車で移動する時も、人間の匂いに惑わされないように屋根に座って過ごす。
人間よりも賢いメラニーは、人類の未来の重要なキーとなる。

とても良く出来た物語だ。
量産されているB級ゾンビ映画も、これくらいストーリーがしっかりしていれば良いのに。

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