宮部版百物語の第3弾。
このシリーズは毎回ティストが違うのも面白い。
1巻は、主人公のおちかが故郷を追われて三島屋に来た経緯も含めて重いトーンだった。
2巻は、おちかの新しい恋が始まり、楽しい感じになっている。
この3巻は、日本昔話風のお話から怪獣モノまで激しくバラエティに富んでいる。
本書は5つの短編で構成されている。
「魂取の池」
恋仲の男女がのぞくと、必ず別れるといういわくのある池の話。
語る相手が結婚を直前に控えた若い女の子なので、ガールズトーク的な華やかさもある。
「くりから御殿」
死んだ幼なじみが現われる不思議な屋敷の怪異譚。
怖いというより切ない話である。
「泣き童子」
相手の悪意に気づき泣き続ける童子と、それが引き起こす悲劇。
語り手も含めて、シリーズ中のトップを争う怖さである。
「小雪舞う日の怪談語り」
百物語の中の百物語という志向。
いつもは一人で怪異譚を聞くおちかが、人の主催する百物語の会に参加する。
この中では、4人の語り手によって、怪談が語られる。
お化け屋敷、寿命を奪う橋、病を見抜く眼、取り殺された岡っ引き、という内容である。
「まぐる笛」
山村で暴れる怪獣と、それを抑える女性の闘いである。
仮面の忍者 赤影の根来衆を想わせる。
「節気顔」
1日だけ死人の顔になる男の話。
その奇怪な状況が、男に生きがいを与えるのが面白い。
1巻で登場した大ボスと思われる「商人」が再登場する。
前回は、キングの小説に登場する悪魔のような絶対悪の雰囲気があったが、今回は、悪とは言い切れなくなっている。
宮部みゆきは、「商人」にどのような役割を背負わせようとしているのだろうか?
今後の登場が楽しみだ。
江戸の商人の日常が活き活きと描かれているのはいつも通りである。
読んでいると、知っているところに帰って来たような安心感がある。
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