進化とは何か

進化とは何か:ドーキンス博士の特別講義 (ハヤカワ文庫NF)有名なドーキンスによる子供向けのレクチャーをテキスト化したものである。
「利己的な遺伝子」のドーキンスは、伝説的人物なので、かなりむかしの人かと思っていた。
宗教に対する攻撃が激しいのに驚いた。
日本人には何でもないが、欧米では問題になったことだろう。
全体的には良く知られている理論の説明だったが、個々の事例や紹介の仕方が面白い。

本書は、1991年に行われたドーキンスによるクリスマス・レクチャーである。
レクチャーは以下のテーマで5回に分けて行われた。

1.宇宙で目を覚ます
2.デザインされた物と「デザイノイド」物体
3.「不可能の山」に登る
4.紫外線の庭
5.「目的」の創造

全体を通して、宗教的な盲信から抜け出し、科学的な視点で世界を見るように啓蒙している。

「宇宙で目を覚ます」では、生命の歴史を科学の視点で見る驚きと楽しさを語っている。

「デザイノイド」とは、デザインされたように見える自然の物体のことである。
自然に存在するものは、あまりに良く出来ているので、誰かがデザインしたかのように見える。
例えば、神が。
しかし、それは、長い年月をかけて自然選択の結果出来上がったものであり、誰かの意志によるものではない。
ドーキンスは、「デザイノイド」を使ったキリスト教の「創造説」を否定している。

「不可能の山」では、登ることが不可能に見える絶壁の山でも、ゆっくりならば登ることが出来ることを例に、少しづつの進化でも、長い年月で大きな変化を生み出す可能性があることを説明している。
眼のような複雑な器官も、光を感じられる皮膚から始まり、少しの有利さが積み重なって出来上がった。
これも進化論への反論への回答になっている。

「紫外線の庭」とは、ハチの視点による世界の見方である。
ハチは紫外線が見えるので、人間と違う方法で世界を認識している。
紫外線の見えるハチから見ると、花は光が明滅しているように見える。
ドーキンスがここで主張したいのは、人間の見方がすべてではないということだ。
話はそこから、生物の存在目的がDNAの複製であることに展開する。

「目的」は、ごく最近この宇宙、人間の脳の中で生まれたものであり、今度はそれ自体が「自促型」スパイラル進化している。
つまり、神から与えられたものではない、とドーキンスは主張している。

有名な彼の理論である「生物はDNAの複製を目的として機械である」の解説かと思ったら、宗教を捨て、科学的思考を身につけるように啓蒙するレクチャーだった。

宇宙で成長するということは、単純から複雑へ、非効率から効率の良いほうへ、無能から大きな脳へと進化していくことを意味します。しかし同時に、ローカルな迷信に満ちた宇宙観から抜け出し、権威や伝統や個人的な啓示ではなく、証拠とオープンな議論とに基づいた、しっかりした科学的な宇宙観というものに移行していくということを意味する。

「進化」は奇跡というシミが付かずにすんでいます。シンプルでありながら絶大に効果的な「幸運を積み重ねる」というやり方を、地質学的な長大な時間軸上に引き伸ばすことによって、非常に確率の低いことも可能にしているのです。

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