あなたの体は9割が細菌

あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた肥満、免疫異常、うつ病と言った21世紀病は、体内の細菌のバランスが崩れたことが原因かもしれない。
抗生物質は偉大な発明だが、抗生物質の多用は、体内の必要な細胞さえも殺してしまっている。
体内の細菌は、人類と長年に渡り共生してきたひとつの器官のような存在である。
体内細菌の観点から人間の健康を考える斬新な視点の本である。

タイトルの「あなたの体は9割が細菌」とは、遺伝子の数から考えた場合、体内の細菌の遺伝子数の合計は、人間本体の遺伝子数の9倍はある、と言う意味である。

ヒトゲノム・プロジェクトによる人間の遺伝子は全て解析されたが、驚くべきことに人間の遺伝子数は、ミジンコよりも少なかった。
それにも関わらず、多様な環境に適応できるのは、体内の細菌たちの働きによるものかもしれないと言うのだ。
腸管内だけでも、100兆個の細菌と菌類が生息しているのだ。

現代人を悩ます肥満、免疫異常、うつ病が広がったのは、ここ50年の間である。
進化のタイムスケールとしては考えられない短期間である。
このような状況になった大きな原因は、抗生物質の多用だと著者は主張している。
抗生物質は人類の寿命を延ばした偉大な発明だが、風邪程度でも処方され、日常的に利用されるようになってしまった。
風邪はウィルス性の疾患なので、本来抗生物質は意味がない。
また、抗生物質を与えると家畜は早く大きくなるため、畜産業でも多く使われている。
その糞を使った農業でも、抗生物質の影響がある。
抗生物質は体内の有用な細菌まで殺してしまい、結果的に細菌のバランスが崩れている。
これが、21世紀病の原因かもしれないというのだ。

腸内の細胞のバランスを取り戻すには、健康な人の排泄物を取り入れるのが有効である。
実際、多くの動物が糞食により母親から必要な細菌を受け継いでいる。
健康な人の糞を腸に注入することで、不治の病が回復した事例も多くあるようだ。

人間の体内の生物多様性を取り戻すことが、健康になる方法である、という斬新な視点の本だった。
この本を読んだ後には、自分の体の中の細菌たちを応援したくなる。

人体に棲むこれらの微生物を合わせると、遺伝子の総数は440万個になる。これがマイクロバイオータのゲノム集合体、つまりマイクロバイオームである。微生物の440万個の遺伝子は、2万1000個のヒト遺伝子と協力しながら私たちの体を動かしている。遺伝子の数で比べれば、あなたのヒトの部分は0.5%でしかない。

ヒトの体型は5万年前と1950年代とで比べてもそれほど違いはないだろうは、こんにちの平均的な体型は明らかに違う。狩猟採集民のころから続いてきた筋肉質でひきしまった体格は、たった60年かそこらでぶくぶくになってしまった。これほど大規模だ変化は人類史において過去に一度も起こったことはない。いや、ヒト以外の動物(ペットと家畜を除く)でも、体型をこれほど変えてしまう病気が広がったことはない。

ヒトの体重は、単に「カロリーイン、カロリーアウト」の差し引きだけでなく、食生活(とくに食物繊維の摂取量)と微生物、短鎖脂肪酸、腸壁の透過性、慢性炎症の相互作用の影響を受ける。肥満は単なる過食の結果ではなく、エネルギー調整の不具合による病気なのだろう。

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