スペース金融道

スペース金融道ナニワ金融道の宇宙版かと思ったら、なかなかSFしているコメディだった。
新星金融は、相手が人工生命だろうが、惑星だろうが融資し、どんな手段を使っても取り立てる。

「わたしたち新星金融は、多様なサービスを通じて人と経済をつなぎ、豊かな明るい未来の実現を目指します。期日を守ってニコニコ返済ー」をモットーとする新星金融の社員である主人公は、優秀だが人間性に欠ける先輩と伴に、今日も債権の回収に赴く。
そして、大概はひどい目にあう。
体内の細胞が反逆したり、身体のパーツを元手にポーカーをすることになったり、宇宙の嫌われ者になったり、ひどい目の会い方のスケールが大きく、そしてSF的である。

主人公と先輩のほら話的冒険を読んでいるだけでも楽しいが、背景となっているアイディアは斬新で、刺激的である。
経済を量子力学を使って分析する方法は、何となく説得力があるが、本当のところはよく分からない。
アンドロイドが人間を超えないように課された「新三原則」によって、無意識と非合理性を持ったアンドロイドは、人間よりも人間的である。
この小説は、アンドロイドの独立運動として読むこともできる。

日本には珍しいタイプのコメディSFである。
個性的なキャラクターを追加して、シリーズ化して欲しいものだ。

「金融商品のモデル化にあたっておれたちが前提としたのは、価格の変動を運動量として見たとき、それが光に比べて非常に遅いということだ。実際の人間の取引においては、それで問題ない。だが、秒あたりの取引回線が無尽蔵に増えた場合ー価格の変動が限りなく高速まで近づいたとき、量子金融工学はアインシュタインの相対性理論の影響を受ける」

大昔、アンドロイドの知性が人を超えそうになったとき、人間たちによって「新三原則」なるルールが課せられたのだのだ。
第1条 人格はスタンドアロンでなければならない
第2条 経験主義を重視しなければならない
第3条 グローバルな外部ネットワークにアクセスしてはならない

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