地を穿つ魔

地を穿つ魔 <タイタス・クロウ・サーガ> (創元推理文庫)クトゥルーの眷属邪神群と戦うオカルティスト、タイタス・クロウ・サーガの第1作目である。
このシリーズは、古典的な雰囲気を持ちながら、出版された1967年当時における現代的な工夫が盛り込まれている。
巻末の解説にあるように、日本で一世を風靡した伝奇小説と同じ構造だが、イギリスらしい衒学的な描き方になっている。

イギリス各地で発生している謎の地震は、実はクトゥルーの眷属邪神群の仕業だった。
そう確信したタイタス・クロウと親友のド・マリーニは、調査を開始するが、敵に追い詰められ海上への退避を余儀なくされる。
そこで、クトゥルーの眷属邪神群と戦う秘密組織ウイルマース・ファウンデーションからの接触があり、共に戦うことを決意する。
ウイルマース・ファウンデーションの協力を得て、クトゥルーの眷属邪神群への攻撃に転じる。

タイタス・クロウは、オカルト版シャーロック・ホームズという位置づけである。
オカルトに対する豊富な知識と冷静な判断力、果敢な行動力で巨大な悪に挑む。
その親友のド・マリーニは、ワトソンの役割である。
読者が理解できるように、オカルトに関する知識を補足してくれる。

本家ラブクラフトと大きく異なるのは、タイタス・クロウ・サーガはアクションを中心としたエンターテイメントだということだ。
世界中に潜むクトゥルーの眷属邪神群と戦う謎の組織ウイルマース・ファウンデーションが、タイタス・クロウと共に敵の殲滅を目指す。
彼らが古代の知識を解析して得た五芒星などの武器は、クトゥルーの眷属邪神群に対して有効である。
後半では、核兵器さえも使用する。
ただ、アクションシーンの描写は若干淡白である。
ウイルマース・ファウンデーションとクトゥルーの眷属邪神群の大規模な戦いが、終了後のレポートとして簡単に語られる。
このシーンだけでも、1冊の本になると思うのだが。

ラストも渋い。
タイタス・クロウとド・マリーニは行方不明となっており、最後の戦いの結果も分からない。

「ものを見る角度を変えてみよ、ということさ。旧神といえども、クトゥルー眷属群に属するような強力な神格たちを、単に物理的な鉄格子の向こうにたやすく閉じ込めておけるなどとは、最初から考えていなかっただろう。とすれば、むしろ旧支配者たちの精神のなかに”牢獄”をつくろうとしたのではないかーあるいは、彼らの肉体そのもののなかに。つまり、精神医学的もしくは発生生物学的ななんらかの障害物を、悪の力を生みだしつづける旧支配者の心あるいは体に注入したとしよう。主要神格のみならず、その仔や配下まですべてにだ。それによって旧支配者たちは、たとえばある特定の象徴記号を見るだけでーあるいはその存在を感じるだけで、もしくは音声に変換されたものを聴くだけでもー悪の力を発揮することでができなくなる、つまり機能不全に陥ってしまうのではないか!」

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