タロットの秘密

タロットの秘密 (講談社現代新書)タロットカードについての怪しい解説書かと思ったが、そうではなかった。
タロットカードの歴史についての冷静な評価が中心であり、何よりも驚いたのは、タロットカードは本来トランプのようなゲームのためのアイテムであり、その神秘性はあとから付加された、ということだった。
オカルトは普通、その大元に神秘性を求めるものだが、スタートには意味がなかった、と認めるのは潔い。
むしろ、だからこそ、今のような神秘的な定番アイテムとなった理由が気になってくる。

タロットカードは、元々はカードゲームを楽しむための道具として発達した。
その時には、「審判」「教皇」のような神秘的な絵柄のカードは存在しなかった。
貴族たちがゲームを高度化させるために、タロットカードの有名な絵札が追加された。

タロットカードに神秘性が付加された最初のトレンドは、ヨーロッパにおけるエジプト・ブームだった。
ヨーロッパ人のエジプト文明に対する憧れが、本来エジプトと何の関係もないタロットカードに、エジプトに関する幻想が結合されることになった。

次に、産業革命の頃に、キリスト教への反発から、タロットカードに反キリスト教的イメージが入り込むことになる。
有名な魔術結社「黄金の夜明け団」やラスプーチンらが、キリスト教に変わる宗教を起こすためにタロットカードを利用しようとする。

そして、アメリカのカウンターカルチャー運動で、既存の思想への失望した人たちがタロットカードに希望を見出そうとする。
同じ時期に、ユング心理学でもタロットカードを人間の集合的無意識に関わる重要なアイテムと考える。

このように、本来無意味であったタロットカードは、時代の要請により様々な意味が付加されて今日に至る。
そして、長い間、多くの人に受け入れられてということは、人間にとって深い意味のある現象だと言える。
口伝により変質しつつ生き残る昔話と同じ構造である。

運命を占う道具だったタロットカードは、現代ではユング心理学の影響で、個人の無意識を探るような使い方もできるようだ。
タロットカードが欲しくなった。
タロットカードにはいくつか流派があるようだが、一番メジャーで、絵柄も好みなウエイト=スミス版が欲しい。

それまでの秘教的タロットが「啓示」するのは、古代からの叡智や霊的宇宙の秘密であったが、ここにおいては、あらわにされるのは自分自身の内面である。つまりタロットは、一種の心理学的ツールとして理解されるようになったのだ。

タロットが占いのツールとして用いられるようになったのは18世紀後半である。占いの中では相当歴史の浅いもので、実践者や研究者によって方法も解釈もバラバラでるというのが現状だ。極論すれば、占いの手順もカードの解釈も、自分流で問題ない。また、自由なイマジネーションを飛翔させられるのが、タロット占いのもっとも面白い点だともいえるだろう。

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