エクソダス症候群

エクソダス症候群 (創元SF文庫)火星生まれの精神科医が、故郷の火星に戻り開拓地の精神病院に努めることになるが、そこは薬も機器も不足しており、古い手法を使った医療に忙殺されることになる。
地球では患者が突然自殺する病が流行しつつあったが、火星ではエクソダス症候群と呼ばれる脱出願望が広がりつつ合った。

いま注目しているSF作家宮内悠介の初長編である。
テーマが精神医学であり、舞台が火星の精神病院だというところが渋い。

火星の精神病院での事件だが、精神医学の歴史が背景として語られている。
精神医学が科学かどうかは、長年に渡り議論されていたのは、その世界に興味のある人間にはよく知られている。
エクソダス症候群という謎の精神病を人類の進化と関連づけ、地球と火星の関係の中で語るのは、SF的アイディアとして秀逸である。
SFにも、まだこのような切り口があったのか、と感心させられる。
今後が楽しみな作家だ。

狂気は狂気によってしか理解できない。
雰囲気的には「地獄の黙示録」を想わせる。
あまりお金もかからないだろうから、このまま映像化しても面白いと思う。

[amazonjs asin=”4488747027″ locale=”JP” title=”エクソダス症候群 (創元SF文庫)”]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です