熱帯アジア動物記

フィールドの生物学1 熱帯アジア動物記 フィールド野生動物学入門この頃、フィールド研究に興味がある。
いまさらフィールド研究をする研究者になろうとは思っていないが、フィールドで研究する科学者たちの記録は、冒険小説としても楽しめる。
フィールド研究の本を探していたら、「フィールドの生物学」というシリーズを発見した。
シリーズ1冊目は、アジア圏での野生動物の観察と保護についてだった。
読んでみると、生物学的な説明よりも、研究者の現地での苦労や工夫の方が面白かった。

フィールドでの研究は、コストとスケジュールとの戦いだということがよく分かる。
研究では、予算とスケジュールが決まっているので、その中で成果を出さなければならない。
しかし、相手は自然なので、思ったようにはいかない。
観察は天候にも左右されるし、目当ての動物がいつも同じ場所に居るわけではない。
そして、現地の人々との協力も必要となる。
本書の中でも、現地のスタッフが実は密猟者で、研究用にワナで捉えた動物を横取りされてしまったというエピソードがあった。
そんな状況で、研究者は知的好奇心を武器にフィールドで研究を続けている。
研究がうまくいっている時は、彼らは本当に楽しそうだ。

フィリピンやインドネシアの哺乳類など、すでに研究し尽くされているだろうと思っていたが、そうでもないようだ。
同じ種類の動物でも、地域によって研究の深さが違うのが現状のようだ。
また、地元の人々の噂を鵜呑みにしている部分もあり、実際に観察すると、新たな発見もある。
まだまだ研究する余地のは分野らしい。

私は、草だけ食べて生きている草食動物の生理に興味があり、その中でもさまざまな種へと適応拡散して大繁栄している反芻動物の生態や行動の進化におもしろさを感じていた。当時、反芻動物の生態に関する研究の大部分は、高緯度地域におけるもので、熱帯雨林が広がる低緯度地域での、反芻動物の生態はほとんど分かっていなかった(それは今でもあまり変わっていない)。

トラップの場所を知っているのはスタッフのはずである。彼は、今朝私がトラップをはずしたことも知っている。彼は獲物を狙い・・・、トラップを先回りし・・・、トラップにかかったマメジカを横取りしていたのだろう。

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