夜来る

夜来たるアイザック・アシモフは、いま読んでも十分に面白いことが分かって良かった。
アシモフの短編集である本書を読むと、SFのアイディア、サスペンス、人間心理を見事にミックスして、上質なエンターテイメントに仕上げていることがよく分かる。
クラークほどの専門性はないかもしれないが、読ませる物語を書く卓越した才能がある故に、古典となっても楽しませてくれる。

表題の「夜来る」は、2,500年に1度だけ夜が来る惑星における、夜の前日の大騒ぎが描かれている。
舞台は、当然地球ではないけれど、地球人にそっくりな人たちが、科学史的な議論を繰り広げ、宗教団体が暗躍する。
セリフが多く、スピード感のある小説である。

「緑の斑点」は、宇宙船に紛れ込んだ異星生物の恐怖が描かれている。
異星生物に動物が寄生されると、目が緑の斑点になってしまうのはビジュアル的に恐ろしい。
異星生物の視点で描かれる部分もあり、弱肉強食の争いがない彼らから見ると、人類は恐ろしく野蛮な生き物である。
単純なSFホラーで終わらないのがアシモフらしい。

「ホステス」は、生物学者の女性の家に、異星人が訪問する話である。
女性の主観で話が進むうちに、彼女の夫の仕事や異星人の目的に疑問を持つようになる。
この話が「ローズマリーの赤ちゃん」のようになっていないのは、成長と不死に関するアシモフのアイディアによる。
SFって、こういうものだったよな、と思わせる1作である。

「人間培養中」は、バクテリアのように人間が、何者かによって実験的に培養されているのではないか、という不安を描いた作品。

「C-シュート」は、敵性異星人に捕虜にされた人々の脱出の物語である。
様々な背景や考え方を持つ人々が、衝突を繰り返しながら脱出の方法を模索する。
英雄的な行動を取ったのは、小柄な男だった。
彼が命を張った理由は意外なものだった。

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