ドクター・スリープ

ドクター・スリープ 上 (文春文庫)あの「シャイニング」の原作者による正統な続編!
オーバールックホテルから逃げ延びたダニーが、大人になった姿が描かれる。
ダンことダニーは、同じ能力を持つ少女と能力を持つ子供を狙う吸血鬼のような一団に戦いを挑む。
以前原書で読んでいたが、翻訳で読むと、細かいニュアンスを理解していなかったことを思い知る。
初期のキングのような雰囲気の小説で、むかしからのファンとしてはとてもうれしい。

オーバールックホテルの幽霊たちに取り憑かれた父から逃れ、生き延びたダニーは、大人になると父と同じように酒に溺れるようになってしまった。
超能力「シャイニング」を持つ故に、過去の亡霊に悩まされ、アメリカ中を放浪するダニーことダンは、ある街のホスピスで安定した生活を得る。
末期患者の死に立ち会い、眠るように穏やかな死に誘導する力があることから、ダンは「ドクター・スリープ」と呼ばれる。
彼の元に強力な能力を持つ女の子からコンタクトがある。
能力を持つ子供たちのエネルギーを食べて生きている吸血鬼のような集団が居るというのだ。
彼らにテレパシーで接触したことで、少女も存在を知られてしまった。
ダンと少女は、彼らに戦いを挑むことになる。

懐かしいキャラクターや風景がたびたび登場するだけでも、「シャイニング」のファンとしては嬉しい。
それだけでなく、本作の作風が、初期のキングに戻った気がするのが、さらに嬉しい。
年齢を重ねて、普通文学寄りになってしまった気がしていたキングだが、「ドクター・スリープ」は違う。
巧みな伏線、何度も現れる思わせぶりなビジョン、非日常的な能力や怪物を際立たせる日常描写など、「デッドゾーン」や「ファイアスターター」を思い出させる。

原書では感じなかったが、翻訳を読むと、敵の怪物たちも単なる悪者ではなく、共感できる部分もあった。
彼らは、能力のある子供を拷問し、恐怖心を引き出してから殺す、極悪非道の集団である。
しかし、子供のエネルギーを食べなければ生きていけず、保存しているエネルギーが底をつくのを怯える日々である。
集団内では家族のような繋がりがあり、メンバーの死に大きな衝撃を受ける。
そんな彼らの中に、原因不明の伝染病が蔓延する。

最後に、懐かしい人物が登場する。
このあたりは泣けてくる。
「シャイニング」と「ドクター・スリープ」の2冊をもって、1つの物語が完結しているようだ。

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