アルテミス

アルテミス 上 (ハヤカワ文庫SF)昨年、デビュー作である「火星の人」が大ヒットし、「オデッセイ」のタイトルで映画化もされたアンディー・ウィアーによる、期待の2作目である。
前作は、火星版鉄腕ダッシュとも言われる創意工夫によるサバイバルだったが、今回の舞台は月面である。
月面の観光都市(サイズ的には村に近い)で働くポーターのジャズは、時に密輸にも手を出す元気な女の子である。
彼女は、企業家の友人からある破壊工作を依頼されるが・・・

工学的な描写は相変わらず細かいし、魅力的な登場人物も多く登場する。
だが、残念ながら前作ほどの驚きがなかった。
火星に一人取り残されたというのに、どこまでも前向きでユーモラスな主人公。
「火星の人」は、NASAの火星探検ミッションとはアンバランスなファンキーなキャラクターが良かった。
本作のジャズも、破天荒なほど元気で、時に口が悪く、楽しいキャラなのだが、密輸もするポーターという設定だと、その性格にもギャップがない。

前作が凄すぎただけで、本作もエンターテイメントとしては十分に楽しめる。
観光客と彼らを支援するスタッフのための月面コロニーは、とても良く考えれれている。
加工の副産物として酸素が作られるので、酸素は有り余るほどある、というのは面白い。
科学的・化学的に考え抜かれたであろう描写が多いのだが、こちらの知識ではイメージしきれないのが悲しい。

未来の月面の話だけれど、コミュニティとしてはとても小さいので、官僚機構がほとんどなく、街の治安は保安官のような存在ひとりの肩にかかっている。
スタッフさえを抱えていない市長は、イメージ的には村長で、アルテミス自体は西部劇の開拓村みたいに思える。
その中で、元気なジャズが暴れまわる、楽しいエンターテイメントだった。

父親が自分をどれくらい愛しているかを知るチャンスに恵まれる人はあまりいないと思う。
でもわたしはそのチャンスに恵まれた。
ふつうなら45分で終える仕事に、父さんは3時間半かけた。
父さんは、ほかのなによりもわたしのことを336パーセント増しで愛しているということだ。
わかってよかった。

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