世にも奇妙なマラソン大会

世にも奇妙なマラソン大会 (集英社文庫)海外でのマラソン大会に興味がある。
この頃よく著書を読むルポライター高野秀行が、海外マラソン大会について書いた本があったので、読んでみることにした。
スポーツと違う意味で、ハードなマラソン大会だった。

著者が参加したのは、西サハラの難民キャンプでのマラソン大会だった。
西サハラの難民を支援する政治的な目的のある大会である。
読んでいると、他人事ながら練習不足が心配になってくる。
著者は、ほとんど大会に出場した経験がないのだ。

この大会は、自力で受付を発見しなければならないようだ。
それくらいの能力がなければ、参加できない大会らしい。
体力と違う意味で、ハードルが高い。

本書は、マラソン大会のレポートだけでなく、著者の面白い経験がいくつか紹介されている。

「ブルガリアの岩と薔薇」では、著者が親切なオジさんに貞操を奪われそうになる。
「名前変更物語」では、入国禁止になった国に入国するために、名前を変えようと奮闘する。
「謎のペルシャ人」は、インドでの怪しいペルシャ人との出会いなどである。

このツアーは相変わらず、てきとうである。スケジュール表には「役所で受付」とあるが、役所の場所も記されていなければ地図もない。
誰かがスピーカーで「こっちですよ」と流したりしない。
そんなことは自力で解決せよということだ。
ここでは参加者が全員、ボランティアである。
ボランティアとは人助けを志願した人というだけの意味ではなく、自発的に考え行動するという意味も含んでいるのかもしれない。

世界中から集結したマラソンランナーたちが西サハラの支援を訴えているだけでも奇妙なのに、なぜかバスクの独立まで応援している。
彼らの唯一の共通項がいまだに「大スペイン共栄圏」であることもそうとう変だ。
だが何よりも不思議なのは、その中で同じく「サハラ・リブレ!」「バスク・リブレ!」などと大声で叫んでいる自分がいることだ。
マラソンを一緒に走っただけで同士意識を植え付けられてしまったのだ。
いくらスポーツがナショナリズムと相性がいいとはいえ、驚くばかりだ。
無闇に楽しい。拳を突き上げてしまう。

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