20世紀末のサイバーパンク後のSFムーブメントが「スチームパンク」だ。
SF小説としての作品は減ったが、ビジュアルの世界では健在である。
映像やファッションで不思議な存在感を持っている。
本書は、スチームパンクに影響を与えた19世紀末の文化の歴史を解説している。
図版は多く、見ているだけで楽しい。
「スチームパンクは、ゴシック・リバイバルとロマン主義の系譜である」という著者独特の発想で美術史が語られる。
当時の風俗の紹介が面白い。
圧巻なのは数多くの図版である。
眺めているだけで楽しい。
本書で紹介されているのは、キーワードとしては次のようなものである。
「美術」
・ウィリアム・ブレイク
・ドラクロワ
・アーサー・ラッカム
「作家」
・ヴェルヌ
・ウェルズ
・ポー
・コナン・ドイル
・アガサ・クリスティ
「その他」
・万国博覧会
・スウィニートッド
・切り裂きジャック
・フランケンシュタイン
・オペラ座の怪人
・ふしぎの国のアリス
人間と科学が近く、ファンタジーが身近に感じられた時代に憧憬を感じる1冊だ。
工場、煙突、機械、歯車、時計仕掛けなどへの偏愛も、見える機械、見える内部構造へのあこがれを示している。それらにもどりたいと思うのは、現代社会への強い不満を反映している。
ブラックボックスになっているコンピュータ・マシンに比べて、ヴィクトリア朝のマシンはユーモラスであり、秘密なしにすべての仕掛けを開帳してくれる。
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