六つの航跡

六つの航跡〈上〉 (創元SF文庫) 六つの航跡〈下〉 (創元SF文庫)
恒星間宇宙船の乗務員6人は、目が覚めると自分自身が死んでいることを発見した。
乗務員たちはクローンであり、先代のクローンが死んだので、肉体を合成し、意識が組み込まれたのだと思われる。
しかし、誰が、何のために6人を殺したのか全く分からない。
乗務員6人は、全員犯罪者であり、誰でも犯人となり得る。
かくして、宇宙船という密室を舞台にしたSFミステリーが幕を開ける。

この小説の時代設定としては、クローンが当たり前となっており、普通の人間とクローンの間の確執が一段落したところである。
クローンは、自分の意識をマインドマップとしてバックアップしているので、肉体が死んでも、新しい肉体を作ってマインドマップをインストールすれば、前回のバックアップから続きを生きられる。
実質、不老不死のクローンだが、キリスト教等の宗教団体からは、魂のない悪魔として糾弾されている。

物語が進むに連れて、乗務員たちの過去が明らかになり、あわせてクローンと人間の闘いの歴史も見えてくる。
次が読みたくなる、うまい構成だと思う。

人間の意識をデータとして保存できる「マインドマップ」という技術の実現性に疑問はあるが、この本は、人間の意識をコンピュータのプログラムのようなものとして扱うことで、面白いアイディアが盛り込まれている。
この小説における「ハッカー」とは、「マインドマップ」を修正して、先天性の疾患を削除することが出来るだけでなく、嗜好さえもコントロールできる。
その最高のテクニックが「ヤドカリ」なのだが、なかなかネーミングセンスが良い。

私がこの本の中で一番好きなのは、第7の乗務員であり、宇宙船をコントロールするAIの「イアン」である。
私は、どうも口の悪いロボットやAIに弱い。
ただ、イアンの人間臭さが、後半での重要なキーになってくる。

本書は、「魔物のためのニューヨーク案内」の著者によるSF長編第一作である。
なかなかのストーリーテラーなので、今後が楽しみだ。

なんとも寛大な条件のように聞こえるが、昔も今も変わらず、囚人を船員として使えば大きなメリットがあることを、マリアはよく知っていた。人件費の節減である。通常の宇宙飛行士を、数世代におよぶ長い航海に雇おうと思ったら、とんでもない額の報酬が必要とされるだろう。いつの世も、出資者たちは可能なかぎりコストを抑えたがるものだ。

「どうしてただのAIが、航海士や船長より偉くなきゃいけないんだ?」
「それが、わたしの任務だからです」イアンが答えた。
「この船の乗員は、信用できませんから」

やつらは必ずまた来る。だからあなたは、自分を守らなければいけない」  
ここで老女は、チェーンソーを右手に持ちかえた。「もっと強くなりなさい」

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