バイオハッキング

この本で言うところの「バイオハッキング」とは、テクノロジーを使って人間の感覚を拡張することだ。
人間の経験の拡張を目指して自分の身体改造をする「グラインダー」は、なかなかサイバーパンクだ。
残念ながら、本書では「グラインダー」に関する記述が少なかった。

本書では、以下の構成で、テクノロジーによる人間感覚の拡張を解説している。

第1部 五感
・味覚
・嗅覚
・視覚
・聴覚
・触覚
第2部 メタ感覚的知覚
・時間
・痛み
・情動
第3部 知覚のハッキング
・仮想現実
・拡張現実
・新しい感覚

「味覚」では、現在の甘味、酸味、苦味、塩味、うま味以外に、人間が判別できる「味覚」を探求している。
しかし、「味覚」は「味蕾」という物理的センサーと脳内の認識機構の組み合わせなので、新しい感覚を取得するのは、なかなか難しいようだ。
「嗅覚」では、「嗅覚」の衰えでアルツハイマーを早期に発見する方法が議論されている。
「視覚」では、人工網膜移植者の現実とその可能性が語られる。
目やメガネに埋め込んだカメラで視覚が得られるのなら、そのカメラはなにも目やメガネの位置にある必要はない。

「仮想現実」の利用法として、恐怖症の克服というのが面白い。
高所恐怖症の治療をするのに、ビルの屋上に行く必要はなく、ビルの屋上にいる仮想現実を経験できれば良い。
それは、飛行機恐怖症なども同様である。
また、「仮想現実」で自分以外の人間になってみると、その人間の立場が感覚的に理解できる。
「仮想現実」によって、共感力が高められるのだ。

いちばんバイオハッキングらしいのは「新しい感覚」である。
グラインダーの中では、身体の中に磁石を埋め込むのが流行りらしい。
身体の中の磁石によって、いままで感じられなかった身の回りの磁力が感じられるようになるらしい。
メリットがあるかは別にして、自分の感覚を拡張する試みは面白い。
現代の芸術家であり、冒険家である気がする。
この辺りを中心に、もっと取材をして欲しい・

接続するのはどんなカメラでもかまわないし、インターネット上のデータを利用することもできる。「あなたのノートパソコンについているあなたのカメラから見ることもできますよ。本人が望むなら」(中略)巻き戻しボタンは? 「ありません」とメックが考えながら答える。「あれば面白いですが」

「見えない世界が存在するのにそれが自分には観察できないというのが我慢がならない」と、耳珠に磁石を入れたリーが言う。「まさに今起きている超新星の末期の叫びが聞こえたっていいはずだ。びっくりするような音に違いない。天体の奏でる音楽や、海底でのコミュニケーションだって聞いてみたい。僕たちの知覚域を超えたところで、いろいろなすごいことが起きているんだ」。

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