ファクトフルネス

TEDで見たことのある元気な爺さんの著作だった。
世界の状況について、人々の誤った認識を正してくれる。
ただ、本で読むよりTEDで見たほうが楽しい。
亡くなってしまったとは残念。

ニュースを見ていると、世界はどんどん悪くなっていく気がしてくる。
しかし、本当はそんなことはなく、過去に比べて世界は良い方向に向かっている。
様々な統計データを使って、著者はそれを証明してくれる。

まず、世界の状況についての簡単な問題が提示される。
けれども、その問題に正答できる人は数少なく、正答率はチンパンジーに劣る。

例えば、こんな問題である。
質問1 現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を終了するでしょう?
A.20%
B.40%
C.60%

低所得国における悲惨な教育状況について、ニュースでの報道を見ている我々は、「A」と予測する。
だが、正解は「C」である。
教育の状況を良くしようとする団体が、善意で悪いイメージを作っているのかもしれないが、正しい状況を理解していないと有効な支援はできない。
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このように、世界の教育、貧困、災害、乳幼児死亡率などの実際の状況を、正しく理解させようというのが本書の目的である。

人間が正しく状況を理解できないのは、人間が本来的にもっているバイアス、思い込みが原因ではないか、と著者たちは分析している。
それは、次の10個の本能である。

分断本能
ネガティブ本能
直線本能
恐怖本能
過大視本能
パターン化本能
宿命本能
単純化本能
犯人捜し本能
焦り本能

それらの本能を解説している各章で、思い込みを避ける実践法「ファクトフルネス」が紹介されている。

ニュース番組の煽りにのせられず、冷静に状況を判断したいものだ。

時を重ねるごとに少しずつ、世界は良くなっている。何もかもが毎年改善するわけではないし、課題は山積みだ。だが、人類が大いなる進歩を遂げたのは間違いない。これが、「事実に基づく世界の見方」だ。

現在、「世界は危険だ」という主旨のニュースは、昔よりも効果的に配信されるようになった。一方で、現在の世界は、人類史上類を見ないほど平和で安全だ。これって、ちょっとおかしくないだろうか?  わたしたちの先祖の命を救ってくれた恐怖本能は、いまやジャーナリストたちの雇用を支えている。

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