巨星

「ブラインドサイト」のピーター・ワッツの短編集である。
テクノロジーと倫理を扱った作品が多く、ハードな主流SFである。
現代科学の最新理論も取り入れている。
しかし、小説としては難しく、なかなか理解できない。

天使
誤射などの付随的被害を避けるため軍事用ドローンに倫理観を持たせる実験が行われた。
倫理的ジレンマに苦しんだドローンは、思わぬ行動に出る。

遊星からの物体Xの回想
SFホラー映画の名作「遊星からの物体X」をXの視点で描いている。
人間と異なり個別の意識を持たないXからすると、融合は敵対的行為ではない。
しかし、人間からすると得体の知れない生物に食べられた上、身体を乗っ取られる恐ろしい事態である。
意識のあり方が違う生命体の出会いは、不幸なファーストコンタクトになってしまった。

神の目
人間の思考を読み取り、危険な思想を発見し、改変できるようになった未来。
主人公は空港のセキュリティチェックで、頭の中をスキャンされる順番を待っている。
やってもいない犯罪への指向があるために、その考えを改変することが倫理的に許されるか? それを問う作品である。

肉の言葉
生命とシミュレーションの違いについての物語。
結論は出ていないが、語り口はウェット。

帰郷
深海で生活できるように改造された人間の視点で描かれている。
人間と接触した時、彼女から人間だった時の記憶は、ほぼ失われていた。

炎のブランド
頻発する人体発火現象の原因は、バイオ企業が開発した製品だった。
経済原理が優先され、現象の責任はスケープになすりつけられた。
真相に気づいた主人公は、真実を暴露する側には回らなかった。

付属的被害
意識に上がるより早く、装着者が行うであろう判断を下す装置が軍事利用され、誤って民間人を殺害してしまう。
これは、殺人なのか、機械の故障なのか、議論の最中、装着者だった伍長は、マスコミの対応を任されることになる。

ホットショット
ワームホール建設のために遺伝子改造で作られた宇宙飛行士たち。
彼らは作戦への参加は自由意志とされているが、実際には他に選択肢はない。
主人公の少女は自分の選択に悩む。

巨星
地球を遥かにむかしに出発したワームホール構築船は、AIによってコントロールされていた。
緊急事態にため2人の乗務員が目覚めさせられた。
船はAIの指示で、赤色巨星に衝突するコースを進んでいたのだった。


AIのコントロールで航行するワームホール構築船の進行方向には、特異な天体があった。
目覚めた乗務員は、その天体が知的生命体だと信じるが、AIは同意しない。
そのまま進むと、天体に衝突し、知的生命体を殺してしまうかもしれない。

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