巨神降臨

全く日本のアニメのような設定を、見事に現代SFとして描いたこのシリーズもついに最終巻。
前巻の最後で、主人公とも言える語り手が死んでしまったので、どうなることかと思ったが、無用な心配だった。
本巻でも、ノリの良い展開で楽しませてくれる。

久しぶりの続巻だったので、状況を思い出すのに時間がかかった。
大体、ロボットごと異星に飛ばされるという前巻のラストが無茶なのだ。
そして、それぞれのキャラクターが誰だったか、なかなか思い出せなかった。

ロボットごと異星に飛ばされた科学者、パイロットとその娘、軍人が異星から帰ってきたところで話が始まる。
いままで通り、インタビューや手紙で構成されていて、とても読み易いのだが、今回は時系列に少し混乱がある。
導入部は、地球到着後と、異星での生活が交互に語られるので、読んでいて状況の把握に時間がかかる。

彼らが戻ってきた地球は、唯一ロボットを保有するアメリカが、力によって世界を屈服させていた。
また、人間に含まれる異星人の遺伝子の割合で差別するディストピアになっていた。
アメリカ以外の地にロボットとともに降り立った彼らは、世界大戦の引き金となる恐れがあった。

最終巻は、壮大な親子ゲンカだった。
娘とともに異星に飛ばされたパイロットは、なんとかして地球に戻り、娘に普通の生活を送らせたかった。
しかし、異星しか知らない娘にとって、地球へは全く行きたくなかった。
慣れ親しんだ環境や友人から引き離され、父親を憎むようになった。
ロボットの操縦が出来る2人は、2つの敵対勢力に抱き込まれ、ロボットを使った壮絶な親子ゲンカが展開する。

力による支配と差別が蔓延する地球を救うための方法が、ロボットを最初に発見した女性科学者のハッタリともいえるアイディアだったが、これはこれで、この作品の世界観にあった終わり方だったと思う。

わたしの望みは……わたしの望みは、古びた家でひとりきりで暮らすことだ。湖か川のそばにある、こぢんまりした、鳥の声を聞きながらポーチに座ってコーヒーを飲めるような家でな。訪ねてくるものは誰もなく、残りの人生を戦争やら異星人やら、それに関わることはいっさい耳にせずに暮らす。そんな暮らしが手に入ると思うか。

わたしになにをいわせたいの、ヴィンセント? 
人間の精神を信じているって? 
もっとも勝ち目のない状況にさえ立ち向かう、わたしたちの生まれながらの能力を? 
ほんとうにそうならいいと思うわ、ヴィンセント。
ほんとうに。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です