スノードーム

大昔に友達に貰った本である。
ずっと積んであったが、邪魔でもあったので読んでみることにした。
悲しく、不思議なファンタジーだった。

物語は、光を減速する方法を研究している科学者が失踪するところから始まる。
彼が残した文書には、彼の過去についての驚くべき物語が書かれていた。

しかし、この小説の方の本当の主人公は、この科学者ではない。
親代わりとして彼を育てた美術館の館長である。
アーティストである館長は、手堅く収入を生み出し続けるため、自分の作品を展示する美術館を経営している。
彼の作品とは、顕微鏡でしか見えないような極小の造形物である。
科学者は売れない画家の息子で、美術館によく遊びに来ていた。
館長が踊り子に恋し、踊り子が画家と恋仲になると悲劇が起こった。

ここからはネタバレである。
館長は、人間を小さくする方法を発見する。
踊り子と画家を小さくし、彼の作品である極小の街に住まわせる。
そして、天涯孤独となった少年を引き取り、息子のように育ている。
しかし、館長が発作で突然の死を迎えたことで、小さくなった2人の世話を少年が引き継ぐことになる。

あらすじだけだと、館長は極悪人のように思えるが、自分の見た目へのコンプレックスと罪悪感、嫉妬にさいなまれる彼は、憎みきれないキャラクターである。
人間を小さくするという魔法のような発明を前提とした不思議なファンタジーだった。

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