鹿の王 水底の橋

「鹿の王」に続く上橋菜緒子の医療ファンタジー。
ファンタスティックな医療ではなく、ファンタジー世界における医療のあり方を描いた作品である。
その世界では、医療と宗教、政治が密接に絡み合っている。
医療の2つの派閥が競い合っているが、どちらが正しいか決めつけないあたりが、上橋菜穂子らしい。

主人公は医療技術を持つ一族の次期当主と目される若者である。
ところが、この一族は自らの国が滅ぼされており、その技術だけを頼りに他国で生活している。
彼が身を寄せている国には、違う派閥の医療が存在する。
彼の医療が西洋風で、対する相手の医療は東洋風である。
由緒正しいとされる東洋風の医療が存在する国で、彼らが治せない病気を治療してしまったので、面白くない。
主人公たちの医術を保護していた王が引退するとの噂から、2つの医術の対立は、政治的な陰謀へと発展し、主人公たちが巻き込まれることになる。

中世風の世界が舞台のファンタジーだが、人の命と医療のあり方についての問題は現代と同じである。
この難しい問題に、個性的な多くのキャラクターとそれぞれの国や民族の歴史を踏まえて、読み応えのあるエンターテイメントに仕上げている。

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