VRは脳をどう変えるか?

この本で語られるVR(仮想現実)の主眼はゲームではない。
VRの持つ今までにないメディアの特性が、人間に与える影響について、解説している。
VRは、かつてブームとなったが経済的に失敗した。
現在は、ゲームとしての側面ばかりが強調されているが、この本を読むと、VRの持つ可能性に期待したくなる。

VRは、今までのメディアと異なり、圧倒的な没入感がある。
視覚、聴覚、一部の触覚を使うVRと現実の区別がつかない。
その特性を使うと色々な場面で利用できる。

ひとつは、共感の強力なツールとしてのVRだ。
老人や避難民キャンの生活を自分の経験とすることで、他者への共感を強化する。
これは差別を無くすためのツールともなる。
別の動物になることさえできる。

また学習にも有効である。
現実と同様の体験をすることで、効果的な学習が可能となる。
実際にアメリカン・フットボールの練習に利用されている。

PTSD治療にも利用されている。
PTSDの治療は、トラウマとなる体験を追体験することで行われるが、VRならばリアルな体験が可能となる。

しかし、そんなVRにも危険性がある。
VRの利用者は、すべての動きを監視、記録される危険性がある。
その情報量は監視カメラの比ではない。
この情報を悪用されないか、気をつける必要がある。

VR内での経験は、現実の経験と同様の生理学的反応を脳にもたらす。
VRは人類の歴史上、最も強い心理的効果を持つメディアなのだ。

「練習を繰り返し経験を積む以外に上達する道はない。(VRトレーニングは)練習を繰り返すのに限りなく近い」

VR経験は現実のように感じられ、人がそこから実際の経験に近い影響を受ける。
従ってVR経験は、たんなるメディア経験ではなく実際の経験だと理解したほうがいい場合が多い。実際の経験と同じく我々の態度や行動を変えうるのだと。

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