ジェフリー・ディヴァーの「人間嘘発見器」シリーズの最新作(文庫版)である。
今回の敵は、人間の集団心理を操る策士である。
集団心理によるパニックは恐ろしいものだが、犯罪者としてはあまり面白くなかった。
毎回読者を驚かせることに注力しているディヴァーだが、今回も期待に違わず、どんでん返しが用意されていた。
ディヴァーのもうひとつのシリーズ「リンカーン・ライム」に比べて、こちらのシリーズは若干キャラクターが弱い。
主人公であるダンスのシングルマザーとしての苦労は分かるが、そこにはあまり興味がない。
今回のどんでん返しは、敵の犯罪者よりも、味方のチームにあった。
さすがはディヴァー、どこに罠が潜んでいるか分からない。
スチュアートが続けた。「しかし、一番恐ろしかったのは何だと思う? 集団になると、人は別の生き物に変わる。人間ではなくなる。
キネシクスは不完全な科学であり、ダンスは赤の他人──目撃証人や容疑者──のボディランゲージを分析する才能には恵まれていても、相手が家族や友人となると、そのスキルが役に立たない場面も少なくない。