読みたいことを、書けばいい。

誰かの読んでもらうためではなく、自分のための文書術の本である。
「読者としての文章術」という斬新な発想の本だ。
元コピーライターだけあって、言葉の選び方がうまい。
読んでいて楽しい。

文章を書く理由は「わたしが言いたいことを書いている人がいない。じゃ、自分で書くしかない」ということだ。
とてもお金になる発想とは思えないが、文章を書くことの根源的な欲求に近く、本来あるべき姿だと思える。

彼が書いているモノの多くは「随筆」であり、まず「随筆」の定義から入る。
「随筆」とは「事象と心象が交わるところに生まれる」。
映画評論の場合、事象に寄るとあらすじばかりになり、心象に寄ると感想だけになってしまう。
だから「交わる」ところが重要なのだ。

本書では「調査」の重要性が強調されている。
「調べることは愛すること。自分の感動を探り、根拠を明らかにし、感動に根を張り、枝を生やすために、調べる。」
随筆的なブログを書く時に、指針となりそうな考え方だ。

あなたが書いたものは、あなた自身が読む時、たった1日だけ、あなたを孤独から救ってくれる。自分は、何かに触れた。心が動いた。そのことを過不足なく、なんとか、書けた。自分の寂しい世界を一瞬、追い越した。何度も読み返す。しかし、何度読んでも文字列は変わらない。そしたら、また書く時だ。

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