楽園の泉

古き良きSF。
クラークの楽天的な未来感が心地よい。
宇宙船同士の戦闘より、遥かに素晴らしい風景が想像出来る。
地上と宇宙空間を結ぶ軌道エレベーターを建設するために、天才エンジニアが奮闘する。

主人公のエンジニアを次々に問題が降りかかる。
最初は、宗教的な問題。
軌道エレベーターを建設するのに最適な場所は、古代から続く宗教的な聖地であり、調整は困難だった。
ところが、大自然の気まぐれで、僧たちは山を降りることになった。
しかし、また問題が発生する。
次々と降りかかる問題を知恵と努力、時には偶然の力も借りて解決しいく。
近未来の話であり、クラークの科学的、技術的描写はとてもリアルなので、現実の出来事のように感じる。
ちょっと古いがプロジェクトXみたいだ。

異星からの訪問者である「スターグライダー」の登場は、工学的なハードSFである本作からは若干浮いているが、良いスパイスになっている。

主人公は、軌道エレベーターの完成を見ることができないが、未来を想い、幸せな最後を迎える。
晩年のクラークが望んでいた姿かもしれない。

一方、スターグライダーは、人類文化にほかの無数の影響を与えただけでなく、すでにかなり進行していた過程を、その絶頂に到達させた。外見上は知性を持つ者たちが、何世紀にもわたって自己の頭脳を錯乱させてきた、何十億語という敬虔なたわ言に、終止符を打ったのである。

すべては相対性の問題だった。彼は塔に到達できない。しかし、塔は彼に到達するのだ──1日2キロという不変の速度で。

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